part83 ページ34
バスから降りて、新喜劇の劇場で学年がまた揃う。ざわつく声を聞くとちらほらとヒバリのことが聞こえてきて少し嬉しくなる。ふふん。隣の米津がじとりと見てくる。教えていなかったから拗ねているらしい。そんな目線で見られてもかわいいだけだぞ。ただしばらくするとさすがに恥ずかしくなってくる。俺は米津の頬をきゅうとつまんだ。
「えぅ、いだい、」
「あんまり見つめないでよね、変に思われるじゃん」
「だってAが教えてくんないから…」
「教えたらお前スマホしか見なくなるじゃん」
「なに?相手してほしかったから黙ってたの?」
「悪い?」
「かわいすぎるから有罪」
「そんなことってあります…?」
そんなことで有罪判決を受けるなんて思わなくて声が漏れた。余りにも絞り出したような声だったからか笑われて、頭を撫でられた。もう許してくれたらしい。こんなにもちょろくて大丈夫だろうか。こういう関係になってからもあのぱちぱちとした電流は変わらず走っている。正直いつまで経っても慣れないから国の偉い人達はこの電流を流さない方法を開発してほしい。世の中の恋する子達ってみんなこんな感じなんだろうか。少しだけ昔付き合った女の子達に申し訳ない気持ちを抱いた。まあもう関係無いんですけど。
吉本新喜劇はめっちゃくそ面白かった。米津も隣でけらけら笑っていたし、俺もだいぶ笑った。たまにはこういうのを見るのも楽しいね。
明日はUSJに朝から行って午後には帰る。修学旅行ももう終わりが近付いている。正直授業面倒だから卒業まで遊んでいたい。無理なんだけど。それに修学旅行が終われば進路希望調査だ。米津は前に悩んでるなんて言っていたけどどうするのだろうか。離れ離れになるのは嫌だなぁ、なんてぼんやり思いながらバスに乗りこんだ。
ホテル。今日は四人部屋。みんなでジャンケンして順番に風呂に入る。それから、くだらない話をしていたら、俺の正面にいた男子がふと暗い表情を見せた。
「どうした?」
「いや、オレ、Aに謝りたくて…」
「なにを?」
「オレ、1年の頃とか、2年の最初、Aのことなにも知らないくせに心の中でバカにしてた…本当にごめん」
頭を下げられる。その肩は少し震えていて、多分黙っていることも出来たのに勇気を出して言ったんだろうな、なんて考える。俺はそいつの顔をぐい、と上に上げた。
「心で思うのは自由だろ。別に謝んなくていいよ」
「でも…」
「今そう思ってないならいーよ」
「ありがとう…」
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洋梨 - 続編おめでとうございます!1も2もちょくちょく小ネタが入っていて良すぎます… (2020年8月18日 3時) (レス) id: 536671a358 (このIDを非表示/違反報告)
灯巴里(プロフ) - 、さん» 忘れてました!すみません、ありがとうございます! (2020年8月16日 11時) (レス) id: 606c2e578b (このIDを非表示/違反報告)
むぎまる(プロフ) - 凄い…もう2まで行ったんですね!面白くて更新来るのいつもワクワクしてます笑頑張ってください´ω` (2020年8月16日 10時) (レス) id: db5695a9c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灯巴里 | 作成日時:2020年8月16日 4時