part53 ページ4
「何?迷惑だって言いたいわけ?」
「そんなんじゃないって。ただそんなに俺のこと気にかけなくてもいいんだよって言ってんの。」
「心配するに決まってんじゃん。またこの前みたいなことがあったらどうすんの?次は前の部活の人かもしれないよ?可能性が捨てられないのに放っておけって言う方が酷くない?」
「はあ?そう何度も同じ目にあうわけじゃないじゃん!そうやって周りの人をみんな疑っていけっていうわけ?それはおかしいでしょ」
そのまま言い争いはヒートアップしてしまって。お互いがお互いを思いやって言っていることだと何となく理解出来ているからこそもどかしくて。最後の方には俺は泣いてたし、米津も柄にもなく怒鳴ったりしてきた。
「はぁ。もういい。」
米津のその言葉の直後に聞こえてくるブツ、という音と通話終了を表す無機質な機械音。しばらくその場に立ち尽くす。こんな時に相談できる相手なんていやしない。ぼたぼたと零れた涙は床のカーペットに染みを作っていく。俺が悪いのか?相手を思いやる気持ちがすれ違って、傷つけなくてもいい心を傷つけてしまった。どうしたらいいかわからなくて、膝から崩れてぺたんと座り込む。通話終了の画面のままの携帯を握りしめたまま声を押し殺して泣いた。
ーーーーーーーー
通話終了の画面を見つめて、ベッドに放り投げて、荒っぽくソファに座る。苛立ちが収まらない。本当はわかっている。Aが俺の事を思って言ってくれていることくらい。でも、俺の中ではあの時のAの生気のない虚ろな瞳が、ぐったりと投げ出された四肢が、抱き寄せたときの微かな震えが脳裏にこびりついていて、またあんな目にあったらと思うとひどく怖くて。心配してるなんて建前で、自分が安心したいから連絡して、連絡させているなんて汚い本心が見透かされていたみたいで、動揺して、結果傷付けた。彼はいつも俺の事を綺麗だなんて言うけど、本当の俺はどうしようもないくらいの臆病者で。目を閉じると、先程の電話でのAの声が鮮明によみがえる。震えていて、時折鼻をすすって、嗚咽をこぼしながら、必死に自分を伝えようとしていた、どこか意思の強い声。あんなに強い声、俺は持ってない。だから、もういいなんて投げやりな言葉で無理矢理逃げた。
「…落ち着いたら、謝らないとなぁ」
頭を冷やしたら、ちゃんと面と向かって話し合おう。こんなにがっつり喧嘩したのに、俺の頭の中に離れるなんて選択肢は存在しなかった。
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洋梨 - 続編おめでとうございます!1も2もちょくちょく小ネタが入っていて良すぎます… (2020年8月18日 3時) (レス) id: 536671a358 (このIDを非表示/違反報告)
灯巴里(プロフ) - 、さん» 忘れてました!すみません、ありがとうございます! (2020年8月16日 11時) (レス) id: 606c2e578b (このIDを非表示/違反報告)
むぎまる(プロフ) - 凄い…もう2まで行ったんですね!面白くて更新来るのいつもワクワクしてます笑頑張ってください´ω` (2020年8月16日 10時) (レス) id: db5695a9c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灯巴里 | 作成日時:2020年8月16日 4時