part75 ページ26
「いたよ、何人か。」
「何人か？」
「あんまり多くなかったとは思うんだけど、あんまり覚えてない。」
可哀想。米津の元恋人達。もう名前すら思い出せてもらえないだなんて。俺も別れたら忘れられるのかなとか思って、少し怖くなる。
「どんな子だったとか思い出せないの？」
「うーん…明るい子だったなあ…くらい」
「ほーん。米津は明るい子がタイプ、と」
「んー、でも明るい子はタイプだと思う。俺があんまり明るくないからさ」
「じゃあなんで俺といれるんだ？俺たいして明るくないぞ？」
そういうと米津は少し考える素振りを見せて、にへ、と笑った。
「だってAは俺のこと色んなところに連れ出してくれるからね」
「…そうか？」
正直、思い当たる節が見当たらない。外に出るより家にいる方が好きだし。米津はにこー、と笑った。
「そうだよ、ほんとに色んなとこ。観光地とかそんなことじゃなくて、Aに会ってAがヒバリだったから楽曲交換とか、ラジオとか、色々新しいことをやるようになったからね」
それは、米津としてなのか、ハチさんとしてなのか。いずれにせよ彼の瞳がきらきらしてて、何となく花火みたいだなと思った。ぱっと開く、鮮やかな。しかしそういうことを言ってもらえて俺も嬉しい。俺も笑顔を返した。
「これからも新しいこと、やってくんだろ？」
「もちろん。連れてってね。俺も連れてくから。」
「あたぼーよ」
ただの元カノの話がこんなにいい話になるとは予想してなくてすこしびっくりだけど、まあ米津の元カノの話もほとんど覚えてないことを聞けたし、俺も隠し事無しに伝えたし、万々歳だな。みんなはそれぞれ騒いでいて、俺たちの会話なんて気にしていないみたいだし。米津はごそ、とノートを取り出した。
「今新曲の歌詞でさ、穴あきだから一緒に考えて欲しいなあって」
「いいよ。全部らるらりらで埋めつくしな。」
「歌詞の6割がらるらりらになっちゃうんだけど！？」
「むしろ10割せめてこうぜ」
「破綻するよ曲が…」
そんなふざけた事を言いつつ、ちゃんと開かれたノートを見る。確かに、4割くらいしか決まってない。俺たちはあーでもないこーでもないと2人でノートに色んな言葉を散りばめていった。
「…あ、もうそろそろ着くのか」
「じゃあここまでだ。やっぱ世界観が違うと同じ意味でも言葉選びが変わるね…」
「変わるな…。」
米津はノートをしまって、ついでにキャリーケースを2人分、下ろす。背がでかくていいな。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 70人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
洋梨 - 続編おめでとうございます！1も2もちょくちょく小ネタが入っていて良すぎます… (2020年8月18日 3時) (
レス) id: 536671a358 (このIDを非表示/違反報告)
灯巴里(プロフ) - 、さん» 忘れてました！すみません、ありがとうございます！ (2020年8月16日 11時) (レス) id: 606c2e578b (このIDを非表示/違反報告)
むぎまる(プロフ) - 凄い…もう2まで行ったんですね！面白くて更新来るのいつもワクワクしてます笑頑張ってください´ω` (2020年8月16日 10時) (レス) id: db5695a9c3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：灯巴里 | 作成日時：2020年8月16日 4時
