part73 ページ24
ベッドに行って、また前みたいに2人で落書きして、さて寝るかとお互いベッドに潜り込んだ時に米津の視線が刺さる。
「…なーに。」
「Aってさ、俺のことずっと米津って呼ぶよね」
「あー。確かに。」
なんとなくそっちの方がしっくりくるからそう呼んでいたけど。言い難そうに視線で呼びかけていたあたりから、今の呼び方は不服なんだろう。
「なーに。米津じゃ不満?」
「…そういう訳じゃないんだけど、なんか、俺だけAって下で呼んでるなーって、ふと思って」
「そうだなあ。俺米津って呼び方気に入ってるから…。お前が予期してない時にでも言って照れさせることにするよ」
「そんなことある?…今は呼んでくれないの?」
「だって期待して身構えてんじゃん。それじゃーつまんない。」
この話終わりー、明日早いし寝よ。と告げて僕は寝ますよー、とアピールする。米津はむすくれてしっかり布団を被った。
「絶対いつか言わせてやるから。おやすみ、A」
「おー。おやすみ、玄師」
さっさと目を閉じる。ごとん、と巨体が落ちた音と、「え、は?」とかごちゃごちゃな言葉がベッドの下から聞こえてくる。俺はくすりと笑って、米津に背を向ける形で目を閉じた。
翌朝。
「偉いねー。なんもしないで」
「朝食がトマトとブロッコリーになるのだけは避けたかった…てか昨日の夜、あれはずるくない?」
「はてさてなんのことやら」
「しらばっくれ方が雑!」
どこかで聞いたな、その言葉。正直めちゃくちゃ恥ずかしかった。絶対しばらくは言わない。そんな俺の決心なんて知らず、目の前の巨人はぶつくさ文句を言う。それでもそれは決して傷つけるためのものじゃなくて、もっと優しいもの。身支度を整えた俺たちは学校に向けて歩きはじめた。
「着いたー。キャリーケース持って歩くの恥ずかしいなあ」
「2人だけだとなんかねー。朝早いから近所迷惑じゃないかも不安になるし」
既に学校にはわらわらと人が集まってきていて、担任を探すのにも一苦労だ。出席をとって、指定された場所に並ぶ。時間になって、新幹線に乗り込む。修学旅行の始まりだ。隣にいる米津と目が合って、米津は目を細めた。
「楽しみだね」
「そうだな」
新幹線が動き出した。あっという間に過ぎていく景色を眺めながら、こんなものを作る人類って凄いなあなんて感想を抱く。楽しみだなあ。
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洋梨 - 続編おめでとうございます!1も2もちょくちょく小ネタが入っていて良すぎます… (2020年8月18日 3時) (レス) id: 536671a358 (このIDを非表示/違反報告)
灯巴里(プロフ) - 、さん» 忘れてました!すみません、ありがとうございます! (2020年8月16日 11時) (レス) id: 606c2e578b (このIDを非表示/違反報告)
むぎまる(プロフ) - 凄い…もう2まで行ったんですね!面白くて更新来るのいつもワクワクしてます笑頑張ってください´ω` (2020年8月16日 10時) (レス) id: db5695a9c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灯巴里 | 作成日時:2020年8月16日 4時