きゅう ページ9
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成人式が終わって、懐かしい顔と話しながら、写真も撮りつつ、うろうろと回る。
…そういえば、紫苑見てないな。
「ねえ、紫苑来てないの?」
「来てないみたいだよ。」
「そっか…。」
適当に捕まえた友達にそう聞けば、シンプルな返事。
…いないんだ。
ちなみに、センラと紫苑は理由までは知らないけど、高校時代に別れたらしいよ、なんてことも耳に入ってきた。
噂が色々飛び交ってるなぁ。
「なあ、」
「…久しぶり。」
スーツを着こなすセンラに声をかけられて、目を合わせず返事をした。
…ごめん、ただどんな顔をすればいいか分からないだけなの。
「…元気やった?」
「うん。センラは?」
「俺も。」
…この沈黙、卒業式の時みたい。
「…連絡先、教えてくれん?」
「…いいよ。」
断る理由もなくて、ラインにセンラの名前が増えた。
…何を話すの、なんて聞けなくてお互いにスマホを片手に持ったまま、また沈黙が続く。
「…また、連絡してもええ?」
「いいけど、」
「ありがと。じゃ、またな。」
「ばいばい。」
昔みたいな笑顔で、友達のところへ戻っていったセンラ。
…何あれ、ズルいよ。
蓋をして、頑丈に閉めた私の心が、想いがあふれてきそう。
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作者名:蒼 | 作成日時:2020年2月3日 1時