君と過ごした二十日間【不死川実弥】

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「……構わねェが」


『ふふ、ありがとう。』




失礼するわね、と向かい側に座り
注文をしているその女。







…こいつ、俺のことが怖くねェのか？
自分で言うのも何だが
顔は傷だらけの強面、
背中には“殺”と書いてある羽織。
お世辞にも話しかけやすい雰囲気ではないだろうに。





『ここの甘味、すごく好きなの。』

きな粉のおはぎとみたらし団子と、
女にしてはまあまあな量を注文し
お腹すいちゃったわぁ〜！なんて
呑気にこちらに笑顔を向けてくる。







「アンタ、この辺の者かィ」


自分でも驚いた。
まさか警戒心の強い俺が、初対面の奴に
こんな風に世間話を持ちかけるなんて想像していなかったからだ。


まだ一言、二言それも一方的に
笑顔と言葉を向けられただけなのに。









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聞くところによるとこいつは
この夏の間、帰省しているらしかった。
昔からこの甘味処が好きらしく
帰ってきている間はほぼ毎日のように通うんだとか。






随分、話し込んでしまった気がする。
これほどまでに、しかも女と話をした事があっただろうか。
いや、初めての出来事だ。
同じ柱の胡蝶は任務の事しか話さねェし、
甘露寺はすぐキュンキュンしやがるからうざってェ。
一般隊士の女など論外だ。
そもそも俺はこんな見た目だ、話しかけられることの方が少ない。加えて自ら話しかけることもねェ。


伊黒や煉獄、それと宇髄くらいか。
俺と普通に話せるのは。
悲鳴嶼さんはすぐ泣いちまうし、
時透はガキだから話が合わねェ。
……冨岡は嫌いだから話したくねェし。


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