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『今日は楽しかったわぁっ。ありがとう。』
「あァ。」
いつのまにか、もうAの屋敷の前だった。
知らないフリ、とはいうものの
先程の呟きが頭の中で何回も再生されて
生返事しかできないでいた。
聞きたいと聞きたくないが心の中で争っている。
だが真実を聞いてしまったらもう俺はこいつに会いに来ることはできないだろう。
「また、出かけようなァ」
俺は、とことん最低な男になることにした。
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じゃあなァ、と背中を向けた瞬間。
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空に走る稲光、凄まじい轟音。
きゃあ、という声と背中に感じる暖かみと柔らかさ。
「……ただの雷だァ。早く中へ入れェ」
そう言っても一向に離れる気配がない。
まずい、こんなことをされていては
俺も男だ、じきに我慢ができなくなるだろう。
A、と振り返り落ち着かせようと
肩に手を置き視線を合わせる。
これがいけなかったのかもしれない。
『雷、怖いの……っ。』
今にも零れ落ちそうなほど大量の涙を浮かべて
そう言われ、胸元に顔を埋めてくる。
ダメだ、耐えろ。
……これ以上は本気でまずい。
A、ともう一度名を呼んだ。
だがこいつは、
とんでもない爆弾を落としやがったんだ。
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『……ひとりにしないでっ…。』
…なぁ、俺に、どうしろっていうんだよ。
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言いたいことは山ほどあった。
思うことも同じくらいあった。
だけどその時は
考えている暇も、言っている余裕もなかった。
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ついに、俺の我慢が限界を越えたからだ。
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美穂(プロフ) - 大号泣させてもらいました‼︎素敵なお話ありがとうございました (2022年8月23日 10時) (レス) @page34 id: c0f42fdb83 (このIDを非表示/違反報告)
月見おはぎ - 涙腺崩壊し過ぎて、半天狗みたいになりました...実弥の儚いイメージにドンピシャリな作品、いえ神作です!!ごちそうさまでした(!?) (2021年8月24日 0時) (レス) id: f413eaa44e (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - 唯梨さん» 私なんかが仲良くさせていただいてもよいのですか…!(汗)余りにも恐縮なのでまずは唯梨さまの下部というところから始めさせてくださいっ…!(?)何でもします…!! (2021年5月9日 9時) (レス) id: 915990a0ec (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - 師匠……圧巻すぎて、言葉にできない(°_°)ひと夏の強烈な恋が、これからも実弥には残り続けるのでしょうかね。。。ひとつひとつの描写が本当に美しくて印象的だった!書いてくれてありがとう!!! (2021年5月8日 19時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
唯梨(プロフ) - 上杉霞音**低浮上さん» かのんちゃん!ありがとうねーっ!!まさかだよね!?私といえばハピエンだから略奪してでも困難を乗り越えてでも結ばれると思ったよね!?笑。いつもとは違うオチで書いてみたかったのよ…! (2021年5月8日 19時) (レス) id: 10a0ab61a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:唯梨 | 作成日時:2021年5月3日 21時