君と過ごした二十日間【不死川実弥】

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…本当に雑魚鬼だった。
本当に、一瞬で片付けてやったわァ。







「A、もういいぞォ｣

肩に触れて声をかけると一瞬びく、としながら
ゆっくりと目が開く。



俺の姿を捉えたその目からは
ひとすじの涙が流れ、次の瞬間には俺の体は
なにか柔らかいものに包まれた。








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Aに抱きつかれていると気付いたのは、
彼女から香るいつかの石鹸のような女性らしい匂いが鼻腔をくすぐったからだ。




「…お、い。」




俺は今どんな顔をしているのだろうか。
好きな女からこんなことをされて、
平然としていられる男がいるなら教えてほしい。









『ありがとう…怖かった…っ、』

そう涙声で、涙目で見上げられる。




俺の中で何かが弾け飛びそうになるのを必死で我慢した。




だけど、さすがにそれにも限界があって。






Aの小せェ背中に腕を回してしまった。
これ以上力を込めたら折れてしまいそうなその体をぎゅっと抱きしめる。









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しばらくすると、少しだけ遠慮がちに、
俺の背に回っている腕の力も強くなった。









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あぁもう好きだ。愛しくて堪らねェ。









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どれくらいそうしていたのだろう。
どちらからともなく体を離し、視線が合う。








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月明かりの下、
今度は一瞬だけ、影が重なった。


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