. ページ19
.
『──っ、はいっ』
動画を見ていたら、横から声を掛けられた。あ、スタッフだからか、と慌ててスマホをしまう。トイレの場所とかかな、と思って声を掛けてきた少女に視線を向けた。
──あれ。この子。
『もしかして早稲田の……』
「あっ……覚えてますか……？」
彼女は去年、2R──ペーパー後の早押しで隣だった、三学年下の後輩だった。
1年しか一緒に活動してないとはいえ、クイ研には珍しい女子、しかもabcのペーパーを勝ち抜けるほどの実力者となれば、流石に顔も名前も覚えている。
『今年も出てたの？』
「はい！ ……とは言っても、今年はペーパー落ちだったんですけど……」
EQIDENも復路まで行けなかったし、と彼女は苦笑いした。確か早稲田は……7位、か。往路での脱落とはいえ、そこまで喰らい付いたのは相当だっただろうに。
『お疲れ様。続きも見ていくでしょ？』
「はい。先輩もお疲れ様です」
2Rのとき、東さんのプレート持ってましたよね、と言われて、そうだよーと緩く返す。……この子には、舞台裏で問を抱き寄せたのを見られていないだろうか。それを思い出した瞬間、ひやりと背中が冷たくなった。
「来年も来るんで、また会いたいです！」
次は勝ち上がりますから！ と意気込む彼女に、楽しみにしてる、と微笑んだ。……よかった、バレてないみたい。別に芸能人ではないとはいえ、問と私が付き合っていることが外部に知れたら困るし──。
「……あと、」
手を振って、これでお別れかと思ったとき、彼女が背伸びをした。耳打ちかと思って少し屈んだ瞬間、嫌な予感が頭を掠める。
……まあそういう予感って、当たるもので。
「彼氏さんと、末永くお幸せに」
彼氏、という言葉が耳に入ってきた刹那、バッと身を引きたくなったのを慌てて堪えた。言葉尻を遮るように顔を上げる。どんな表情をしていいかわからなくて、人に言わないでね、と視線を逸らしながら呟いた。
「言いませんよー。色々大変だろうし」
……あ、この子相手が問なのもわかってるな。どこから漏れたのか知らないが、今後は人前であんなことはしないようにしないと、と固く心に誓い直す。彼女はもう一度手を振って、今度こそホールの入り口に向かって駆けていった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 238人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鳩麦こおり(プロフ) - 犬子さん» そう言っていただけて嬉しいです...！ ありがとうございます🥰 Wデートの更新はだいぶ時間がかかると思うんですが、気長にお待ちいただければ幸いです🙇♀️ (2月18日 10時) (
レス) id: 5ea5a9dd22 (このIDを非表示/違反報告)
犬子(プロフ) - 初めまして。年上彼女×mnの組み合わせと主様の表現力に終始ﾆﾔﾆﾔしつつ読ませていただいています！gnちゃんもかわいい…Wデート、拝見できると嬉しいです…。大変尊かったので思わず感想をお送りしましたm(__)m (2月16日 1時) (レス) @page13 id: 7ba156e249 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鳩麦こおり | 作成日時：2024年2月4日 13時
