検索窓
今日:4 hit、昨日:47 hit、合計:18,154 hit

abc ページ17

.

※ abc the22nd を見ていた方がわかりやすいかもしれませんが、見てなくても大丈夫です! 一応【your side】で戦況の説明が入ります


【mn side】

『お疲れ、問』

 壇上を下り、EQIDENを一緒に戦った都立大の仲間たちに揉まれた向こうに待っていたのは、1年前、隣で決勝をやり合った恋人だった。

「……Aさん」

 優しい微笑みは、初めて見たときの真剣な表情とは打って変わって柔らかくて、目が離せなくなってしまう。彼女の前まで歩いていくと、スタッフの腕章がついた腕が持ち上がって、温かい右手に頭を撫でられた。

『お疲れ。よく頑張ったよ』

 ……あれ。何でだろう。

「……っA、さん……」

 大学の友達や後輩に囲まれた時は、どうとも思わなかったのに。無意識のうちに、火照った頬を幾筋もの涙が流れた。

『……もう。泣かないの』

 泣いている理由が自分でもわからないうちに、取り出されたハンカチで涙を拭かれる。薄い桃色のそれに目元を覆われて、意図せずまた涙腺が緩んだ。

「……っあ、Aさ、」
『敗者復活。今年もあるんでしょ?』

 涙を吸い込んだハンカチが通り過ぎた向こうに見えたのは、Aさんの柔らかい笑顔。それだけでまた、泣いてしまいそうになる。

『まだチャンスあるんだから。泣かないで』

 終わりじゃないよ、と軽く抱き寄せられる。それから人目を憚ったのか、ぐ、と肩を持って引き離された。

『……さ、客席戻りな』

 背中を押す手が相変わらず優しい。振り向いて見たその顔に、ああ、彼女を見て張り詰めていたものが切れてしまったんだな、と涙の理由を悟った。ただでさえ後のない最後の年なのに、QuizKnockへの出演で他の参加者より注目されていて、いつになく緊張していたから。

「……ありがと、Aさん」

 ねえ。僕、うまく笑えてる?

 ……笑えてなくてもいいか。彼女は、僕と同じくらい悔しい気持ちを、きっと去年味わっているから。

『うん、またあとで』

 手を振った彼女のその表情を、僕はきっと一生忘れない。

.→←.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (43 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
238人がお気に入り
設定タグ:QuizKnock , QK , mn
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

鳩麦こおり(プロフ) - 犬子さん» そう言っていただけて嬉しいです...! ありがとうございます🥰 Wデートの更新はだいぶ時間がかかると思うんですが、気長にお待ちいただければ幸いです🙇‍♀️ (2月18日 10時) (レス) id: 5ea5a9dd22 (このIDを非表示/違反報告)
犬子(プロフ) - 初めまして。年上彼女×mnの組み合わせと主様の表現力に終始ニヤニヤしつつ読ませていただいています!gnちゃんもかわいい…Wデート、拝見できると嬉しいです…。大変尊かったので思わず感想をお送りしましたm(__)m (2月16日 1時) (レス) @page13 id: 7ba156e249 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:鳩麦こおり | 作成日時:2024年2月4日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。