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『なに?』
「んーあのー、えっとね」
ゆるっとした笑顔のまま、リュックを手繰り寄せてまたごそごそと中身を探る問。しばらくして、丁寧にラッピングされたミニカップケーキがその手におさまった。
「山森さんがライターさんにもって。今日Aさん来れなかったから、代わりに貰ってきた」
『えっ、ほんと?』
うん、と頷いて、問は私の手にカップケーキを載せる。
『山森さん、みんなに配ってたってこと? 凄いなぁ』
「なんか鶴崎さんも配ってたよ、ブラックサンダー」
見る? と言ってまたリュックを漁り始めたので、慌てて止めた。そんなことをしたら貰った全てのチョコが出てきてしまう。片付けが……と思いながら止めると、彼は怪訝そうな顔でリュックを閉め始めた。
「別に、僕Aさんが思ってるほど貰ってないと思うけど」
『え? そうなの』
「だって鶴崎さんと山森さんと、あとクイ研の……」
そこで言葉が止まった。リュックのチャックを閉じていた手も、一緒に動きを止める。急に詰まった言葉の続きを聞こうとして彼の顔を覗き込んだら、その双眸がこちらを向いた。
「……Aさんは、僕が他の人から貰ってても、嫌じゃない?」
まっすぐな瞳がこちらを見返している。少しだけ、寂しそうな声色。それが数日前の私と重なって、思わず彼に手を伸ばした。
「……っAさ、」
『嫌じゃないよ』
きゅ、とその背中に回した手で彼のパーカーの裾を握った。温かい体温が自分のそれとひとつになる。──意外と身長は高くなくて、でもその割に広い背中。骨張った体格が抱きしめた服越しに伝わってきて、男の子だな、なんてどきりとした。
『……だって、問がそんなに喜ぶから』
ああ、私はいつになったらこの体温に慣れることができるんだろう。私の背中に回された手は相変わらず温かい。
「……そっか」
少しだけ掠れた声にすら、どくりと心臓が鳴ってしまう。速くなった鼓動に気づかれたくなくて、ゆっくりとその身体を離した。そのまま彼を見上げる。──目が合って、思わずその頭に手を伸ばした。ふわ、と黒髪が指に絡む。
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鳩麦こおり(プロフ) - 犬子さん» そう言っていただけて嬉しいです...! ありがとうございます🥰 Wデートの更新はだいぶ時間がかかると思うんですが、気長にお待ちいただければ幸いです🙇♀️ (2月18日 10時) (レス) id: 5ea5a9dd22 (このIDを非表示/違反報告)
犬子(プロフ) - 初めまして。年上彼女×mnの組み合わせと主様の表現力に終始ニヤニヤしつつ読ませていただいています!gnちゃんもかわいい…Wデート、拝見できると嬉しいです…。大変尊かったので思わず感想をお送りしましたm(__)m (2月16日 1時) (レス) @page13 id: 7ba156e249 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鳩麦こおり | 作成日時:2024年2月4日 13時