2 ページ2
・
その日を境に副担任の行動は
エスカレートしていった。
ドッヂボールで気に入らないクラスを
執拗に追い詰め、出来のいいと
みなされた生徒をじゃんじゃん
自分の雑用に使っていった。
これは学年5位のMも人ごと
ではなかった。
ある時、副担任はMに
「私のお手伝いに来ない？」と誘ってきた。
しかしMは「友達を泣かせるような
先生を手伝う気はない。」と拒否。
次の日から副担任はMをなにかと
貶すようになった。
テストで高得点を取れば
カンニング疑惑の目を向けられ、
逆に悪ければ「努力不足」とクラス全員に
聞こえるように言い放った。
しかしこれしきでMの心が折れることは
なかった。
それにも慣れ始めたある日、Mのもとに
Yがやってきた。
Yはどうやら廊下で落し物をしたらしく、
一緒に探してほしいとMにお願いした。
Mは友のお願いならと快諾、
一緒に探し始めた。
しばらくするとそこへ副担任が来て
二人に「落し物はこれかな？」と
キーホルダーを目の前で揺らした。
それは遠足のときに買ったお揃いの
キーホルダーで、とても大切なものだった。
副担任は返すどころか、Mの懐に
入っていた手鏡からもう一つの
キーホルダーを引きちぎり、
二つを見比べると、鼻で笑い二つとも
踏み潰してしまった。
これにはMも堪忍袋の尾が切れたようで、
偶然Mの掃除場所の監督だった
教頭先生に全てを話し、
「お願いします、あの先生をこの学校
から追い出してください！」と
お願いした。
当時、学校の先生の人事は教頭先生の
管轄だったので、危険な先生の情報は
教頭先生に告発するのが一番効果的だった。
教頭先生も副担任の言動は目に余る
ものがあったらしく、
「わかりました。」と快諾した。
しかし、次の年にも副担任は学校からは
出て行くことはなく、教頭先生が
追い出されていた。
これはおかしいとMは思ったのだが
教頭先生のお別れ会には全員笑顔で参加、
Mをはじめとした教頭先生を
慕っていた生徒たちが生徒手帳を持って
列を作っていた。
この当時、好きだった先生のサインを
もらうのが流行っていたこの学校では
よくある光景だった。
教頭先生はサラサラ素早く一人ひとりに
サインを書いていった。
ところが、Mの番になると
やけに書く時間が長い。そして終わって
返したかと思うと
「家に帰ってから見て。」と教頭先生は
こっそりMに耳打ちした。
Mは各々サインをもらい湧いている
生徒たちを尻目に早々と家に帰った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：86 | 作成日時：2019年8月30日 17時
