002 ページ2
・
「それで心優しーいボクがこーやって
使ってあげてるってわけー！」
大原が元気に答える上では杏に嘴と羽を
付けたような魔物が元気に歌っている。
それを可愛らしく思う褐色の髪の女
─赤塚未来と冷たい目で見る南部、
それを大槻はワンコインのBLTサンドを
頬張って見るしかなかった。
「うん、私に憑いてた悪魔を封印して
くれたのも翔太だからね。」
と赤塚は頬にある赤いハートの刻印を
摩った。
「そーだよ！健吾くんもピアス、
取ってないよね？」
「取ってないよ！」と大槻の十字の
ピアスが日光に照らされる。
「ちょっと！なんであんたたちだけ
楽しい話してんの！」と南部は流れを
ぶった切った。大原に対する嫌悪感が
見え見えである。
「それで！南部ちゃんは治療法
わかったんだって？」
出し抜けに大原はそんなことを
言い出した。彼には分からなかった
ようだが赤塚は場が凍りつく感覚が誰を
見ずとも感じられた。
「…なかったそうよ。」と南部は静かに
答えた。
「で、なんだったって？健吾くん。」
「…え？」と赤塚からの質問に大槻は
固まってしまった。
「あの…」
「喋らないで！」と南部は大槻の台詞を
阻止した。
「…てことは何かしらあるのね、南部が
嫌がる方法で。」
琥珀の目は真実を見抜いていた。
瑠璃色の目は全くもって見抜けなかった。
「き、嫌いな人と…キス…しなきゃ
いけないみたいで。」
とうとう大槻は言ってしまった。
固まった顔にも豊麗さを感じる自分が
いることに大槻は嫌悪感を感じた。
「じゃあ辞めた方がいいね。」
最初にそんなことを言ったのは本当の
ことを見透かした赤塚であった。
「なんで！？南部さんによくなって
ほしいって」
「嫌いな人とキスするのが、一生の傷に
なるでしょう？」
「うっ」とだけ言って大槻は黙って
しまった。もうそれは大槻にとっても
一つの傷と化していた。
「で、でも！治ることがその処方箋に
なったらって…」
「何言ってんの？歩けるのが普通に
なったら処方箋になんかならない。
そのくらい気づかないの？」
どんなに大槻は頑張っても赤塚は冷淡に
返す。それをただ、南部は見ているしか
できなかった。
『私も嫌いな人となんかキスしたくない』
だなんて大槻の目の前で言えない。
更にそこにぽかんとしていた大原
だったが、瑠璃色の目に止ん事無い光が
灯るとタタッと二人のもとに駆けた。
と、体格に大差ない赤塚を心惹かれる
温もりが包んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
