第五十四話 ページ4
「それはいいけど、どうしたの?もう寝てるのかとも思ったけど、部屋の中から声はしたからさ。誰かいるのかと思って。」
椿はそう言うと、チラっと部屋の奥へと視線を向けた。
その様子にAは慌てて訂正した。
「あ、えっと違うの。電話していて……。」
そう言いながらAはドアを開ききり、部屋の奥へと進む。椿もそれに習い部屋へと足を踏み入れると扉を閉めた。
そして、テーブルに置いていたスマートフォンを手に取ると、椿の方へと向き直る。
「桜哉に使い方を教えてもらったから、実際に使ってみようと思って通話していたの。」
「そうなんだ。誰と話していたの?」
椿からそう聞かれて、Aは返答に困った。
リヒト、と名前を出しても椿に伝わるだろうか?ピアニストと言っていたが、椿がクラシックに興味を持っているとは聞いた事もないし知らない可能性の方が高いとAは思ったからだ。
しかし、ここで下手に誤魔化しても困るだけだと思い直し素直に名前を出すことにした。
「リヒトっていう子よ。ピアニストとして活動しているらしいけれど、椿も知ってる?」
「ああ、知ってるよ?彼、有名だからね。」
椿も知っているくらい有名なのかと、Aは改めて驚いた。
来週講演もある、と言っていたがピアニストとしてしっかり活動しているのだと素直にAは関心すると、もっとピアニストとしての“リヒト”についても知りたいとAは思った。
「そうだったのね。ピアニストと言っていたけれど、そんなに有名だなんて……。」
「うん。でも意外だなあ、そんな彼とAが知り合いだなんて。」
「それもそうなんだけど、話せば長くなるというか……。」
そう言葉を濁したところで、Aは「あ!」と声を出して思い出した。
「それより椿にお願いがあるの。」
「お願い?何?」
「今度、そのリヒトとカラオケに行きたいんだけど……ダメかしら?」
___________________________
Aとの通話が切れた後も、リヒトはぼーっとスマートフォンをしばらく見つめていた。
その画面には先ほどまで話していたAの登録画面が表示されていた。
そして思い出されるのは、彼女の口から言われてた事。
――年をとれない、不老不死
そう言う彼女の声は少し震えていた。
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サキ(プロフ) - こちらの小説ってもう更新されないんですか? (2018年5月3日 13時) (レス) id: 21861887f2 (このIDを非表示/違反報告)
日和 - はい!私生活に余裕が出て、暇があったらぜひ更新してください! (2016年8月20日 22時) (レス) id: 40ecd8018d (このIDを非表示/違反報告)
はちくま(プロフ) - いなさん» コメントありがとうこざいます、ちょっと今私生活がバタバタしておりますのでもう少々お待ちいただけると幸いです、すみません……コメントいただけて嬉しいです、頑張りますね! (2016年8月3日 7時) (レス) id: 5e438ae83b (このIDを非表示/違反報告)
はちくま(プロフ) - 日和さん» コメントありがとうございます。楽しんでいただけて何よりです。ちょっと今私生活がバタバタしておりますのでもう少々お待ちいただけると幸いです、すみません…… (2016年8月3日 7時) (レス) id: 5e438ae83b (このIDを非表示/違反報告)
いな - ずっと待ってます!更新頑張ってください!!応援しています!続きが楽しみです! (2016年8月2日 23時) (レス) id: 1536a576c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はちくま | 作成日時:2015年5月21日 5時