第七十一話 ページ21
それがですね……、とリリイがその時の状況を簡単にまとめて説明した。それを黙って聞いていたヒューは眉間に皺を寄せ、疑問を口にした。
「我々の事を知っていた……という事は吸血鬼に関係しておる人物のようじゃのう」
「すごく綺麗な人で、クロとも仲良さそうに話してたし真祖と主人との関係についても知ってるような感じだったんだよな……。」
“もしかして、彼があなたの今の主人?”
自分を見て、確かに彼女はそう言ったのだ。主人の存在を知ってるとなると、吸血鬼……真祖に関しての知識もあるに違いない。
そして話の流れで思い出したかのように、御園も話に加わってきた。
「そういえば、リリイ……貴様もあのシスターを知っているような口ぶりだったじゃないか。知り合いではないのか?」
「いえ、それが……。知っている、ような気はするのですが、ハッキリと分からなくて。」
「分からない?」
「はい。どこかで会っているとは思うのですが、それがいつだったのか、どこだったのかが思い出せないんです。相当昔の出来事ような気もします。」
「真祖のように長い年月を生きていると仮定すると、彼女も吸血鬼である可能性が高いな……。」
御園は一点を見つめ、考え込むような素振りを見せた。
「ふむ……しかし、その人物は椿と行動を共にしているのじゃろう?それが引っかかるのぉ……。」
「確かに真祖達も知らなかった椿を、Aさんだけは知っていたってことだもんな。」
「それもそうじゃが、椿の存在を知っているとなると……」
と、ヒューは途中で言葉を濁した。
リリイと静かに目を合わせると、お互いそれで理解したのか何も言わず視線を逸らした。真昼がその意図を探ろうと口を開きかけたところで、それを制するようにヒューの方が先に口を開いた。
「ここで話していても埒が明かんのう。ここは一先ず撤退じゃ!行くぞ、鉄!」
「おう」
「……では、私は受付をキャンセルしてきますので。」
ヒューと鉄は肩車をした体勢のまま歩みだし、リリイも言葉通り店内へと姿を消してしまった。その場に残された真昼と御園は、言い表せぬ疎外感を感じながらもお互い何も言い出せずにいた。 クロだけじゃない。やっぱり真祖達も何か隠している。 前々から感じていたものが、ここに来てハッキリと確信に変わる。
だが、それを聞き出す術も勇気も今の真昼は持ち合わせてはいないのだった。
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サキ(プロフ) - こちらの小説ってもう更新されないんですか? (2018年5月3日 13時) (レス) id: 21861887f2 (このIDを非表示/違反報告)
日和 - はい!私生活に余裕が出て、暇があったらぜひ更新してください! (2016年8月20日 22時) (レス) id: 40ecd8018d (このIDを非表示/違反報告)
はちくま(プロフ) - いなさん» コメントありがとうこざいます、ちょっと今私生活がバタバタしておりますのでもう少々お待ちいただけると幸いです、すみません……コメントいただけて嬉しいです、頑張りますね! (2016年8月3日 7時) (レス) id: 5e438ae83b (このIDを非表示/違反報告)
はちくま(プロフ) - 日和さん» コメントありがとうございます。楽しんでいただけて何よりです。ちょっと今私生活がバタバタしておりますのでもう少々お待ちいただけると幸いです、すみません…… (2016年8月3日 7時) (レス) id: 5e438ae83b (このIDを非表示/違反報告)
いな - ずっと待ってます!更新頑張ってください!!応援しています!続きが楽しみです! (2016年8月2日 23時) (レス) id: 1536a576c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はちくま | 作成日時:2015年5月21日 5時