例えばその愛が、果てのない暗闇だとして。【オリジナル】 (ページ9)

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「あ、わからないです！退屈だったので、本当は三十分くらいかもしれません」
「阿呆か」
「あ、あほ！？」

　呆れた目でこちらを見るノルデ様に私は目を丸めた。
　ノルデ様は普段は穏やかで大らかな人柄だ。性格はいい方ではないだろうが、いきなり人を罵倒するような人ではない。
　恐らく太陽のせいで周りにかける余裕がないのだろう。この彼の辛辣な態度も、ギラギラと照りつける太陽のせいだと思いたい。

「妙だねぇ。彼が君をそんなほったらかすなんて……そういえば、ノルデくん。異端の気配は」
「……あっち」
「あっちはさっき行ったよね？何もなかったよね？至極平和な光景だったよね？」
「……あー、そうだったか。感覚がろくに機能していないんだ。勘弁してくれ」

ノルデ様はそう言うと眉間に指を押し当てた。そんな彼を見てルシファー様は肩を竦めて、こちらを見た。「さっきからずっとこんな感じ」とでも言いたげな顔だ。私はそれに苦笑いを浮かべる。

「虱(しらみ)潰しでいいだろう」
「逃げられるってー！」

　そう言うとふらふらとノルデ様はご主人様が向かっていった路地裏に向かって歩き始めた。それにルシファー様がついていく。私も一緒に行こうかと考えたが、ご主人様が帰ってくるまで待っていなければと、足を止めた。
　するとルシファー様はこちらを振り向き、明るい笑顔を浮かべる。

「サイファちゃんもおいでー」
「でも……」
「ノアールくんには僕が連絡するから大丈夫だよ。ほらほら、行こう！」
「あ、ルシファー様！」

　ルシファー様はそう言うと私の手を取り、軽い足取りで路地へと向かっていった。