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「あれ、サイファちゃん?」
「あ」
私は見知った声に顔を上げた。そこには満面の笑みでヒラヒラと手を振る白髪の青年と、快晴には似合わない重圧感のある黒い傘をさした少年が立っていた。
「ルシファー様、ノルデ様」
「やあやあ。今日はノアールくんと一緒じゃないの?」
白い髪を揺らしルシファー様はそう言うと愛想のいい笑顔を浮かべた。
ルシファー様は要約すると、悪魔の長である。しかし、その容姿は悪魔とは全くもって無縁そうに見える。花嫁の衣装よりもずっと白い髪に、死人のように白い肌。長い睫がかかった黄色の瞳は、やけに人目を惹く。
「一緒ですよ。ただ買い忘れがあったので、お店に戻りました」
「へえ。じゃあ僕も一緒に待ってよ」
「おい」
ルシファー様がそう言うと、それまで頑なに口を開かなかったノルデ様が不機嫌そうに呟いた。見た目は幼いものの、声は平均の成人男性のものより幾分低い。彼は深く眉根を寄せる。
ノルデ様は茶色がかった黒髪に、金色の瞳を持った少年の姿をしている。見た目より年齢はだいぶ上なので扱いは気をつけなければいけない。種族は悪魔の亜種、といったところか。正確には異端と呼ばれる存在だ。
異端とは俗に言う化け物だ。何か心残りがあるがために魂のみがこの世に停滞し、人にもなれず、悪魔にもなれない。ある種、ならず者というところか。どんなものよりも恐ろしく悲しい者達。形容も様々で人型のものもいれば、動物の形をしたもの、何の形を得ないものと様々で、一概に言えるものでもない。
異端は基本的に太陽に耐性のないものが多い。ノルデ様もまた耐性はなかったはずだ。しかも異端の方では重度のほうらしく、太陽に当たると目が見えなくなって、まともに動けなくなるといつだか本人から聞いたことがある。なので、夜しか出歩かないと彼は言っていた。それなのにこんな時間、どうして彼がここにいるのだろうか。
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