第26話 通信司令班 副班長 フィオナ ページ25
班長に任された書類。
明らかに軍医向けの書類を見つけ、「仕事だから」と言い聞かせて医務室へ向かうこととした。
何だ、結局向かわなくてはいけないではないかと少し拗ねそうになったが、先程少しだけ向こうのデータにお邪魔した時に確実に報告しなくてはいけないことが出来てしまったのだ。
あの二人ならばきっと大丈夫だとは思うのだが───
そう考えていると気付けば医務室の前。
かなり長考していたらしいが人に会わなかったことに驚いた。
皆戦争の作戦や準備に忙しいのだろうな。
些か戦争に乗り気過ぎるのもどうかと思うのだが。
「全く、うちの軍は
そう言いながら医務室の扉をコンコンコン、と3回ノックする。
普段なら柔らかい声で返事が返ってくるはずなのだが、どうやら中では悶着ある様子。
そっと扉を開けて中に入ってみると、淡い深緑の光とそよ風のような心地良い風が溢れ出てくる。
蛇を従えた、淡く発光する小さな生き物がふわふわと宙を漂いながら長い袖を振り、その動きに合わせて周りを浮遊する白い蛇が緩やかに動く。
その光景はまるで ───。
「……あれ、フィオナくん?」
「……えっ」
扉にしがみついて食い入るように魅入っていた私を現実に引き戻したのは、当事者の一人であるリオットさん。
手を振りつつ何かを見てぎょっとした顔をした後に勢い良く医務室内に引き入れられ、より近くで私を夢中にさせた現象が蠢く。
ふと、会議前に切った傷の辺りがポカポカと暖かくなったのに気付いた。
視線を送れば、一匹の白い蛇が患部を包み込むように巻き付いていた。
白い衣装に身を包んだ小さな精霊と思しき青年が目の前で小さく微笑んだかと思うと、一瞬光が強くなり目を閉じる。
次に目を開けた瞬間には、もう跡形もなく全てが消えていた。
「怪我はどうかな、二人とも」
そう言われて左手を見れば、怪我はどこにもなく、痛みすら感じない。
目の前で無数の手に拘束されているレヴィンさんもお腹をさすって「……大丈夫だ……」と呟いている。
「今回は戦争が間近に控えているから荒治療だけど、今度はちゃんと医務室に来たまえね」
そう言ってリオットさんは少し悲しそうに笑った。
そして私の方を向き、
「それで、用事は?」
と笑った。
当初の目的を忘れかけていた私は、慌てて書類を三人の前に出してこう切り出した。
「相手方は、違法ドラッグに手を出しているらしいのです」
9人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桜吹雪@低浮上(プロフ) - 更新しました! (2021年9月4日 14時) (レス) id: 52e526ba44 (このIDを非表示/違反報告)
桜吹雪@低浮上(プロフ) - すみません!書き直しますので更新します! (2021年9月4日 14時) (レス) id: 52e526ba44 (このIDを非表示/違反報告)
桜吹雪@自作小説低更新(プロフ) - 書くの忘れてました!すみません!更新しました! (2020年10月9日 18時) (レス) id: aafc5aee29 (このIDを非表示/違反報告)
桜吹雪@自作小説低更新(プロフ) - 更新します! (2020年10月6日 19時) (レス) id: c919c9fb7a (このIDを非表示/違反報告)
するふぁ@givehappiness(プロフ) - 更新しました (2020年3月3日 16時) (レス) id: 07edb2e3d3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:グラーヴ連邦同志一同 x他4人 | 作者ホームページ:http
作成日時:2020年1月8日 20時