みにくい嘘 ページ9
「よおー、4989番！お前ー、いつになったらあの嫁さん寮に呼ぶの？俺らちょっと楽しみにしてんのサ、だからぜひ早く――」
「あー、べつに必要がないから、今は呼ばないよ。あとどんなことでも、Aちゃんは俺のだから、彼女に興味持たれてあまりいい気分はしないの。…気をつけてね」
肩に絡みついてきた腕をぐっと握って落としながら、顔だけ知っているような同僚のことも見ずに踵を返し、先へ進んでいく。
……寮の自室になんて、呼べるわけがない。
あそこにはいま、…彼女が。俺の記憶に確かに居座る、あの彼女の、生まれ変わりが。
(俺は4989番だ)
Aちゃんのおかげでまだこの番号に残ることができた。この番号を捨てるわけにはいかない。だから早く、けじめをつけなければ。…彼女に嘘をつかなくてもいい日が早く、来るように。
焦りとともに足を速めていたため、あっという間に目的地――骨髄プールに着いていた。廊下を進み、扉の施錠を解いてそっと中に身を滑り込ませる。後ろ手に内鍵を閉めながら、部屋の中央に足を崩して座るそれを睨みつけた。
「……また来たの」
「だってこの部屋の鍵、前世で作った複製が残っていたし。ちゃんと中から鍵閉めておいてあげたんだ、えらいでしょう。……わたしがここにいることが見つかったら、お前、結構困るもんな」
けぶるような睫毛を上げて、彼女はこちらを見据えた。
……嘘なんていくらでもついている。
きっとこれは、優しい嘘なんてもんじゃないのかもしれない。俺の残した火種だ。俺のせいだ。ただこの女の存在を、一番大切なAちゃんに知られたくないだけ。そんな自己防衛のためだけの、この世で一番きたない嘘だ。
だからどうか、できる限り、見えにくく。こんな醜い嘘だから。
「ここに帰って来たからにはやっと時間が取れたんだな。それじゃあ早速始めようじゃないか、楽しい昔話の辻褄合わせを――なあ、元4988番？」
ぐ、と思わず目元を歪ませる。女はそれを目にしたのか楽しそうに笑った。
不覚だった。せめてほんとうの表情なんか一切隠していたかったのに。……彼女の前では、隠せたのに。
「人違いだなんてもう言えないな？その顔じゃあ、お前はきっと思い出しただろう。……ねえ？お前がわたしと、わたしの弟を殺したんだ」
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お久しぶりです。お待たせ致しました。
重要な辺りなので幾度か手直しが入るかもしれません。
ほんとう捏造多いんで、無理だなって思ったら是非そっ閉じを…。
終わり
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まじかるれいん☆ - オザさん» ヘイ！気に入りました！即興ってところがすごい(°▽°) (2018年9月4日 21時) (
レス) id: 9a258b9a35 (このIDを非表示/違反報告)
まじかるれいん☆ - オザさん» ヘイ！気に入りました！即興ってところがすごい(°▽°) (2018年9月4日 21時) (レス) id: 9a258b9a35 (このIDを非表示/違反報告)
水無月(プロフ) - オザさん» アルミ缶にするわ← うん！よろしくね〜 (2018年9月3日 21時) (レス) id: 626aa5da43 (このIDを非表示/違反報告)
オザ(プロフ) - 水無月さん» ありがとう！手を怪我して赤血球さんが大変なことになるので握り潰すのならアルミ缶くらいにしておいてください…今作もよろしく！！ (2018年9月3日 20時) (レス) id: 5d539585d0 (このIDを非表示/違反報告)
水無月(プロフ) - 続編おめでとう！いや、今回も尊すぎて缶を握り潰しちゃいそう…w 更新頑張ってね！楽しみに待ってまーす！ (2018年9月3日 19時) (レス) id: 626aa5da43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：オザ | 作成日時：2018年9月2日 17時
