41 恋心 ページ43
A「正直、異性から好意を向けられるのは、得意では無いんです。そりゃ、多少ドキドキとまではいかなくとも、たじろぐ程度はしますし」
49「うん」
帽子を拾い上げて鍔を摘む。少し目の前が眩しくて、目元を覆うように頭を傾けた。
A「だから勘違いさせてしまっていたら申し訳ないんですけど、…別にこれは恋心とか、そういうのじゃ、多分なくて」
49「うん」
A「…すみません、うまく、言葉が出てこなくて」
いたたまれない。じっとこちらの言葉を待っている彼には申し訳ないが、他にどう表現すればいいのか分からない。ここから自分の生い立ちからなにからを説明する訳にもいかぬだろうし、説明をしたとて、彼がいい気分になるとは思えない。
49「でも俺は好きだよ」
A「…は、あ」
こくん、と喉がなった。喉が渇いたなぁ、と何処かぼんやりと考える。立ち上がろうとしても、本格的に腰が抜けていて歩行など贅沢にできる状態ではなかった。
49「腰抜けた?運ぶよ」
A「…い、いいです、少し休めばよくなる」
49「なら俺も一緒に待つけどいい?」
A「……」
なんて卑怯な。白血球はただでさえ忙しいのだ。彼らの働きは、細胞の安全に直結する。こんなことで拘束してたまるか。
…と、私にも思わせるのが狙いだろう。妙なところで策士な彼にひとつ、ため息をついた。
A「…じゃあ、…心臓部まで」
49「まっかせてー!」
彼はにこりと笑ってそう言ったものの、ぴたりと固まってしまった。どうしたのかと首を傾げていると、彼の陶器のように白い頬に、うっすらと朱色が指した。
49「あ、…や、ほら、Aちゃん、俺に触られても、大丈夫?かなーって…」
A「……、今更でしょう、俺は気にしませんよ、好きに触ってもらって」
49「言い方!Aちゃんってそういうところあるよね…」
そう言いつつ、おそるおそる私に触れてくる彼。ひょいと軽々と持ち上げられてしまえば、もう何も言えまい。
疲労が溜まっていたのか、抱き上げられて数分後、私は自然と瞼を落としていた。
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まみむのめ(プロフ) - 結(むすび)さん» コメントありがとうございます!3年前の作品なのに楽しみにしてくださっていたというお言葉とても嬉しいです!頑張って完結させようと思っているので、是非気長にお付き合い下さい😊 (2月27日 3時) (レス) id: e8b27ecec5 (このIDを非表示/違反報告)
結(むすび)(プロフ) - 更新ありがとうございます!大好きな作品だったのでこうしてまた読むことが出来て本当に嬉しいし幸せです…! (2月25日 10時) (レス) @page41 id: b4d41c6372 (このIDを非表示/違反報告)
まみむのめ(プロフ) - スノウさん» ありがとうございます!細胞が人間くささを出す話がとても好きなので嬉しいです! (2021年6月9日 0時) (レス) id: 7de2b213c2 (このIDを非表示/違反報告)
スノウ(プロフ) - この話すごく好きです。下の方のコメントをパクるみたいであれなんですけど(気分害されたらすいません。)、本当に人間味がある話だなと思いました!更新楽しみにしてます! (2021年6月8日 15時) (レス) id: 4bf735c37e (このIDを非表示/違反報告)
まみむのめ(プロフ) - 玲さん» コメントありがとうございます!遅くなってしまい申し訳ないです。感想をいただけるのはとても嬉しいので、更新頑張ります! (2021年6月5日 1時) (レス) id: 7de2b213c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まみむのめ | 作成日時:2021年3月16日 3時