40 気づき ページ42
A「な、なんかすみません、俺のせいで」
あわてて拭おうとしたその手を掴まれる。かと思えば、次の瞬間には、私の肩口に、彼の頭が擦り付けられていた。
49「……それでも、俺は君を守りたい、…………」
A「……」
大きく心臓が高なった。初めての感覚に動揺して、うまく言葉が出てこない。母音すら出せなくなって、この一瞬で声帯という概念すら消え失せてしまったかのような感覚である。
A「あ、の」
やっと出てきた2文字は、非常に掠れていた。しかし、呼びかけたは言いものの、何を言うかは決めていない。
49「……Aちゃん?」
私の声が上ずっていたからか、彼が顔を上げた、と同時に、私の顔を見て硬直する。
49「……Aちゃん、かおまっか…」
A「っえ!?」
指摘されて反射的に腕で顔を隠す。確かに言われてみれば顔が熱い。まだ冬だが、早くも熱中症の症状に当てられてしまったのだろうか?熱中症であるならば、ここで座り込んでいる場合ではないのではないか?
A「ね、熱中症かもしれ」
49「ちゃんと見せて」
A「うっ」
力ではやはり叶わない。ゆっくり腕を外されて、両手を握られた。自分の顔にあまり自信が無いから、真剣な眼差しに晒されるのは、得意ではない。
A「あ、あんまり見ないでくれませんか」
49「……照れた?」
A「……それは、」
そんなはずない、といえなかった。何故かは分からない。いや、分からないふりをしているだけなのかもしれない。
49「やった、少しは脈あったんだ」
A「ちが……」
49「ほんとに?」
A「……」
さっきとは打って変わって、いつもの様に笑いかけてくる彼。何だか罠にハマったような感覚がして、妙に胃のあたりがムカムカする。手のひらで転がされるような感覚は、あまり好きではなかった。
A「…はぁ」
だが、認めてやらねばならないだろう。私は大きく息を吐くと、彼の方へ視線を向ける。
A「…ずっと、気づいてない振りをしてました」
33人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まみむのめ(プロフ) - 結(むすび)さん» コメントありがとうございます!3年前の作品なのに楽しみにしてくださっていたというお言葉とても嬉しいです!頑張って完結させようと思っているので、是非気長にお付き合い下さい😊 (2月27日 3時) (レス) id: e8b27ecec5 (このIDを非表示/違反報告)
結(むすび)(プロフ) - 更新ありがとうございます!大好きな作品だったのでこうしてまた読むことが出来て本当に嬉しいし幸せです…! (2月25日 10時) (レス) @page41 id: b4d41c6372 (このIDを非表示/違反報告)
まみむのめ(プロフ) - スノウさん» ありがとうございます!細胞が人間くささを出す話がとても好きなので嬉しいです! (2021年6月9日 0時) (レス) id: 7de2b213c2 (このIDを非表示/違反報告)
スノウ(プロフ) - この話すごく好きです。下の方のコメントをパクるみたいであれなんですけど(気分害されたらすいません。)、本当に人間味がある話だなと思いました!更新楽しみにしてます! (2021年6月8日 15時) (レス) id: 4bf735c37e (このIDを非表示/違反報告)
まみむのめ(プロフ) - 玲さん» コメントありがとうございます!遅くなってしまい申し訳ないです。感想をいただけるのはとても嬉しいので、更新頑張ります! (2021年6月5日 1時) (レス) id: 7de2b213c2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まみむのめ | 作成日時:2021年3月16日 3時