11 弱点 ページ13
私は感情的になりやすいが、状況判断については冷静な方だと自負していた。
だから、酸素や栄養素摂取の必要が無い緑膿菌達が、血球たちを追いかけ回しているというこの状況下において、すぐに逃げ出せばいいという選択肢は普通に取るつもりだった。
だが、逃げ出してからしばらくして、あの髪留めを落としてしまったことに気づいた。その瞬間、先輩の顔が脳裏によぎり、迷うこともせず震えた足を動かして、元来た道を引き返す。
出来れば細菌共に巡り合わず目的のものを見つけることが出来ればいいのだが、白血球の到着が遅れていると風の噂で耳にしたため、あまり期待は抱かない方がいいだろう。
曲がり角を出、大通りに足をかける。すると、街路樹の付近に、赤の蛍光色が見えた。自然の色より映える赤を捉えるのは容易で、すぐその髪留めに手を伸ばす。良かった。そう思ったのも束の間、私の手に収まるはずだったその髪留めが、突然宙に浮いたのだ。
否、髪留めが、ではなく、髪留めも、だ。
それも、気づけば地に足が付いていなかった。何故かと思い目を回すと、何やら緑色の触手が見える。反射的に振り返れば、1つ目の大きな瞳がこちらを覗いていた。
緑膿菌だ。全く気が付かなかった。街路樹付近が緑色だったとはいえ、注視していれば気づくはずのものを、流石に周りが見えてい無さすぎである。
そう思い、また舌打ちをした。
緑膿菌は私を掴む触手とは別に、もう一方の触手であの髪留めを摘むと、私の眼前に持ってきて笑う。
緑「これが欲しいのか？」
そう聞かれ、ただただ何も言わずに目の前の悪魔を睨んだ。
それは私が先輩から貰ったものだ。お前のような薄汚い細菌が持つものじゃない。今すぐ離せと口に出したかった。
だが、流石にこの状況でその言葉を口にすれば、どうなるかくらいは想像がつく。
確かに死ぬことを望んではいるものの、痛いものが好きな訳では無いのだ。そこだけは、不可抗力の場合を除いては、何よりも譲れない。
睨みつけるだけの私に苛立ったのか、体への締め付けが酷くなる。余程ねじ曲がった性格をしているのか、細胞をいたぶる趣味があるようだ。内蔵が潰れているのではないかというほどの痛みに、くらくらと目眩がする。
だが、この目の前の髪留めだけはなんとかして手中に収めたい。手を抜こうと身をよじるが、出てくるのは小さな呻きだけであった。
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まみむのめ(プロフ) - 結(むすび)さん» コメントありがとうございます！3年前の作品なのに楽しみにしてくださっていたというお言葉とても嬉しいです！頑張って完結させようと思っているので、是非気長にお付き合い下さい😊 (2月27日 3時) (
レス) id: e8b27ecec5 (このIDを非表示/違反報告)
結(むすび)(プロフ) - 更新ありがとうございます！大好きな作品だったのでこうしてまた読むことが出来て本当に嬉しいし幸せです…！ (2月25日 10時) (レス) @page41 id: b4d41c6372 (このIDを非表示/違反報告)
まみむのめ(プロフ) - スノウさん» ありがとうございます！細胞が人間くささを出す話がとても好きなので嬉しいです！ (2021年6月9日 0時) (レス) id: 7de2b213c2 (このIDを非表示/違反報告)
スノウ(プロフ) - この話すごく好きです。下の方のコメントをパクるみたいであれなんですけど(気分害されたらすいません。)、本当に人間味がある話だなと思いました！更新楽しみにしてます！ (2021年6月8日 15時) (レス) id: 4bf735c37e (このIDを非表示/違反報告)
まみむのめ(プロフ) - 玲さん» コメントありがとうございます！遅くなってしまい申し訳ないです。感想をいただけるのはとても嬉しいので、更新頑張ります！ (2021年6月5日 1時) (レス) id: 7de2b213c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まみむのめ | 作成日時：2021年3月16日 3時
