4 怒りと嫉妬 ページ6
『…、んで』
白「え?」
『なんでっ!!!』
そんなことが言えるんだ。
そこまで言いかけて、下唇を噛んだ。いきなり立ち上がり声を荒らげたことに、赤血球と好中球は、こちらを見て驚いているようで、目を見開いて私を見上げている。
気づけば握りしめていた紙コップは、その握力のせいでベコリと凹んでおり、その形を正常に保てなくなっていた。
赤「ぷ、プラズマ細胞…さん?あ、あの」
あぁ、赤血球が困っている。私を見上げて、おろおろとその顔を青くさせている。
しかし、これは私のプライドの問題であり、他人の情緒どうこうは関係ないのだ。
『…………ごめんなさい。お茶、ありがとう。仕事がまだ残ってたから、…ここで失礼します』
赤「で、でも」
『さよなら』
心配そうに私を見上げた赤血球を、ひどく蔑ろにすることに対して、ちくりと傷んだ良心を押し殺し、私は紙コップを分別用のゴミ箱に捨てて逃げるようにその場を離れる。
こんな態度を最後にして、またあの赤血球に出会ってしまったら、また謝られてしまうなと後悔した。
あの子は何も、いや、正確に言えば、あの場にいた誰もが、責められるべきものでは無かった。
勝手に劣等感を抱いて、勝手に嫌って、そのせいで嫌われて。
紛うことなき自業自得。高く積み上げられたプライドを折ることも、折られることも、耐えられないだなんて、まだまだ未熟者だと自己嫌悪で今にも吐きそうになる。
(どこか、休める場所を探そう…)
あたりを歩く一般細胞たちにとって、ふらふらとした足取りで通路の幅をとる免疫細胞、特にプラズマ細胞など、心配よりはるかに邪険に思うことだろう。
また、嫌われる理由を作ってしまったな。
そう考えて、街路樹がそびえ立つ大通りを曲がり、ようやくたどり着いた裏路地にひとり、声を殺して泣いた。
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まみむのめ(プロフ) - 結(むすび)さん» はじめまして!コメントありがとうございます!結構時間をかけて作ったものなので、そう言って頂けてありがたいです! (2021年6月5日 1時) (レス) id: 7de2b213c2 (このIDを非表示/違反報告)
結(むすび)(プロフ) - コメント失礼します、、!最後まで読ませていただきました。作者さんの文章の書き方も設定を細かく考えている所も、キャラとの関係性も、主人公ちゃんのイラスト等も、何もかも素晴らしかったです!素敵な作品をありがとうございます、、 (2021年5月18日 18時) (レス) id: 0ce8940541 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まみむのめ | 作成日時:2021年3月5日 16時