42 最適解 ページ44
『そうですね、その通りだ』
ひどく落ち着いた声だった。本当に彼女が放った言葉なのかと、俺は流していた涙を止めて、彼女を見る。
悲しい顔をしていた。
放った言葉とは裏腹に、とても悲しい顔をしていた。
生きたいと顔に書いてあるくせに、俺の事を思った末に、自分の命を捧げようとする彼女の考えが、分からなかったわけじゃない。でも、1146番が言った、「逃げたいだけ」という言葉は、ひどく彼女に突き刺さったことだろう。
本来は恋に落ちるはずのなかった我々にとって、生きながらその幸せを享受することは、あまりにも難しかった。
お互いの立場、行き方を尊重した結果、その先に何が待っているのかと聞かれれば、他人より遥かに早い『死』のみである。
彼女は純粋に怖かったのだ。俺を置いていくこと、俺に置いていかれること、そんな不安を抱えて生きていくことに、自信がなかっただけなのだ。
普段の気丈な彼女は、プラズマ細胞としての彼女だ。本当の彼女は、繊細で脆く、可愛らしい普通の、1人の女の子なのだ。
49「…もういいよ」
気づけば口が開いていた。彼女が、Aが目を見開いて俺を見る。
『なに…?』
立ち上がり、そんな彼女の腕を掴むと、びくりとそのの体が跳ねた。だが、俺の手を振りほどこうと身をよじることはせず、じっと俺の言葉を待っている。
49「諦めてさ、俺と幸せになってよ」
きっと、これが最適解。
俺はそう言うと、驚いた顔をする彼女の頬を、両手で包み込み、ゆっくりと口付けをした。
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まみむのめ(プロフ) - 結(むすび)さん» はじめまして!コメントありがとうございます!結構時間をかけて作ったものなので、そう言って頂けてありがたいです! (2021年6月5日 1時) (レス) id: 7de2b213c2 (このIDを非表示/違反報告)
結(むすび)(プロフ) - コメント失礼します、、!最後まで読ませていただきました。作者さんの文章の書き方も設定を細かく考えている所も、キャラとの関係性も、主人公ちゃんのイラスト等も、何もかも素晴らしかったです!素敵な作品をありがとうございます、、 (2021年5月18日 18時) (レス) id: 0ce8940541 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まみむのめ | 作成日時:2021年3月5日 16時