40 覚悟:裏 ページ42
49「できるわけ、ないだろ」
怒りからか、彼は酷く震えていた。ふざけるなとでも言うように、拳を振り上げて大きく声を荒らげる。
49「がん化するなんて、一般細胞でも有り得ることなんだぞ！俺たちがいちいち、そんな他人のバックボーンを気にしてると思ってんのかよ！」
『思ってるよ』
49「っ！」
彼の怒号とは対局的に、冷静にそう返事をする私に、4989が驚きを露わにした。同じく白血球として戦う身ならではの、その言葉の重みを、彼は分かっているのだろう。
『私だって、もし逆の立場だったとしたら、殺せないから』
本当は、殺したくても殺す能力がないだけだけど、と心の中でそう付け加える。だが、もし私が彼であったら、きっとそう思っていたに違いなかった。
悔しそうに下唇を噛み、俯く彼の手を取って、自分の喉周りを抑える。
『あんまり痛いのはやめてね、私、痛いのは怖いから』
痛いものは痛いし、痛いものは怖い。
きっと彼はそれを知っている。私の首に回った手をそのままにして顔を上げた彼は、嗚咽を漏らして泣いていた。
49「っ、ぐ、う……やだ……やだよぉ………」
私の首に手をかけたまま、彼はそう言って泣きじゃくる。
駄々をこねると言うには、あまりにも辛気臭い判断を迫られているなと思った。
『このまま付き合って、幸せに暮らしてたって、私がいつ骨髄腫細胞になるかわからない。幸せだった日々が、その一瞬のうちに全て崩れていってしまう。それって、すごい怖いことだと思わないかな』
それに、彼はきっと私を殺せなくなってしまうから。
そんな私の考えを全て理解した上で、彼は渋っているのだろう。今1度言葉にしてそう伝えても、彼はうんと首を振ることはなかった。
これではいつ殺して貰えるのか分かったものじゃないな、と考えていたその時、懐かしい顔が目に入った。
1146「な、なにを、しているんだ…！！！」
あの時の、好中球だ。
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まみむのめ(プロフ) - 結(むすび)さん» はじめまして！コメントありがとうございます！結構時間をかけて作ったものなので、そう言って頂けてありがたいです！ (2021年6月5日 1時) (
レス) id: 7de2b213c2 (このIDを非表示/違反報告)
結(むすび)(プロフ) - コメント失礼します、、！最後まで読ませていただきました。作者さんの文章の書き方も設定を細かく考えている所も、キャラとの関係性も、主人公ちゃんのイラスト等も、何もかも素晴らしかったです！素敵な作品をありがとうございます、、 (2021年5月18日 18時) (レス) id: 0ce8940541 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まみむのめ | 作成日時：2021年3月5日 16時
