【はたらく細胞】好きと嫌いは紙一重

39　君がいい ページ41

49「は…？」

当然の反応だったと思う。彼は私の放った言葉がうまく消化しきれず、それは持っていたまんじゅうを落としたことに気を配れないほど呆気に取られていた。

49「な、何言って、なんで？そんなこと出来るわけないのに」

立ち上がって背を向けた私と同じく、立ち上がって動揺する彼にお構い無しに私は続ける。


『多発性骨髄腫って知ってる？』

49「たはつ…なに？」

『やっぱり知らないよね』


そう言って私は丘の上から街を見下ろす。沢山の細胞たちが、酸素を持って走り回っていたり、道路交通の治安を守っていたり、細菌を倒していたりしている様子を見ながら、少しだけ笑った。




『癌になっちゃうんだ、私』




多発性骨髄腫。

体の中の免疫細胞である「プラズマ細胞(形質細胞)」が、「骨髄腫細胞」という細胞にがん化して起こる病気のことである。

根治が非常に難しい病気とされ、症状がある場合は、1度感染すると最悪移植を行う必要がある。更に、臓器の移植する場合は、白血球、赤血球、血小板などを1度全て死滅させる場合もある。



だから、私は他人と関わってはいけなかったのだ。



『もし、私のことが好きなら、今すぐ私をここで殺してみせて』


49「そ、れは」


『できないわけ、ないよね。好中球』




それに、







『殺されるなら、君がいい』





そう言って笑う私に、酷く顔を歪ませた4989は、目を伏せて首を振った。

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