検索窓
今日:31 hit、昨日:34 hit、合計:25,385 hit

3 侮辱 ページ5

その時の私は、過去一引き攣った顔をしていたと思う。


それほどに、私は目の前の白血球に対する劣等感と焦燥感と、あと少しの憧れとでぐちゃぐちゃになっていた。

なんでこんな奴と一緒に、呑気にお茶を飲まなければならないんだ。

赤血球から差し出された紙コップに溜まったお茶を口元に運んで、嚥下する。

喉を通るひやりとしたお茶の温度が、私の昂った精神を冷やしていくようで、その感覚は意外と心地よかった。


そして一気に飲み干した紙コップを握り、はぁ、と反射的に冷たい息を吐くと、そのタイミングを見計らったらしい赤血球が私に話しかけてくる。


赤「細胞さん、プラズマ細胞さんって言うんですか?」


『え…あ、うん。まぁ…』



白「彼女らも白血球の1人でな、同じ免疫細胞なんだ」


そう好中球が口を挟むが、彼に応とも否とも答える気力がない。私がそうですね、とぶっきらぼうに相槌を打つと、それを聞いた赤血球が、徐に手を叩いて私を見た。


赤「そうなんですか!じゃあプラズマ細胞さんも戦ったりするんですよね、いつもお疲れ様です」



なるほど、彼女は私をなんの細胞なのか知らなかったようだ。だからあの時、声を掛けてきたんだろう。

いや、彼女の性格であれば、知ってようが知らまいが、同じように私に接してきただろう。その結果が…。

そう思い、彼女の隣に座る白血球を見る。

彼はその視線に不思議そうな顔を浮かべた後、血相の悪そうな白い肌を揺らして、口を開いた。


白「プラズマ細胞は俺たち好中球より、遥かに効率よく細菌を殺すんだ。元はB細胞なんだが、その中でも抜きん出たエリートがプラズマ細胞として分化することになっている」


赤「そ、そうなんですか…!?プラズマ細胞さんってエリートの方なんですね!」


『………』


何も言葉が出てこなかった。

あの白血球がそんなことを言ってくるだなんて、想像を絶していたからだ。

驚きと少しの嬉しさと、それを凌駕し蓄積したのは、






憎悪だった。

4 怒りと嫉妬→←2 不運な偶然



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (30 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
37人がお気に入り
設定タグ:はたらく細胞 , 4989番
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

この作品にコメントを書くにはログインが必要です   ログイン

まみむのめ(プロフ) - 結(むすび)さん» はじめまして!コメントありがとうございます!結構時間をかけて作ったものなので、そう言って頂けてありがたいです! (2021年6月5日 1時) (レス) id: 7de2b213c2 (このIDを非表示/違反報告)
結(むすび)(プロフ) - コメント失礼します、、!最後まで読ませていただきました。作者さんの文章の書き方も設定を細かく考えている所も、キャラとの関係性も、主人公ちゃんのイラスト等も、何もかも素晴らしかったです!素敵な作品をありがとうございます、、 (2021年5月18日 18時) (レス) id: 0ce8940541 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:まみむのめ | 作成日時:2021年3月5日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。