3 侮辱 ページ5
その時の私は、過去一引き攣った顔をしていたと思う。
それほどに、私は目の前の白血球に対する劣等感と焦燥感と、あと少しの憧れとでぐちゃぐちゃになっていた。
なんでこんな奴と一緒に、呑気にお茶を飲まなければならないんだ。
赤血球から差し出された紙コップに溜まったお茶を口元に運んで、嚥下する。
喉を通るひやりとしたお茶の温度が、私の昂った精神を冷やしていくようで、その感覚は意外と心地よかった。
そして一気に飲み干した紙コップを握り、はぁ、と反射的に冷たい息を吐くと、そのタイミングを見計らったらしい赤血球が私に話しかけてくる。
赤「細胞さん、プラズマ細胞さんって言うんですか?」
『え…あ、うん。まぁ…』
白「彼女らも白血球の1人でな、同じ免疫細胞なんだ」
そう好中球が口を挟むが、彼に応とも否とも答える気力がない。私がそうですね、とぶっきらぼうに相槌を打つと、それを聞いた赤血球が、徐に手を叩いて私を見た。
赤「そうなんですか!じゃあプラズマ細胞さんも戦ったりするんですよね、いつもお疲れ様です」
なるほど、彼女は私をなんの細胞なのか知らなかったようだ。だからあの時、声を掛けてきたんだろう。
いや、彼女の性格であれば、知ってようが知らまいが、同じように私に接してきただろう。その結果が…。
そう思い、彼女の隣に座る白血球を見る。
彼はその視線に不思議そうな顔を浮かべた後、血相の悪そうな白い肌を揺らして、口を開いた。
白「プラズマ細胞は俺たち好中球より、遥かに効率よく細菌を殺すんだ。元はB細胞なんだが、その中でも抜きん出たエリートがプラズマ細胞として分化することになっている」
赤「そ、そうなんですか…!?プラズマ細胞さんってエリートの方なんですね!」
『………』
何も言葉が出てこなかった。
あの白血球がそんなことを言ってくるだなんて、想像を絶していたからだ。
驚きと少しの嬉しさと、それを凌駕し蓄積したのは、
憎悪だった。
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まみむのめ(プロフ) - 結(むすび)さん» はじめまして!コメントありがとうございます!結構時間をかけて作ったものなので、そう言って頂けてありがたいです! (2021年6月5日 1時) (レス) id: 7de2b213c2 (このIDを非表示/違反報告)
結(むすび)(プロフ) - コメント失礼します、、!最後まで読ませていただきました。作者さんの文章の書き方も設定を細かく考えている所も、キャラとの関係性も、主人公ちゃんのイラスト等も、何もかも素晴らしかったです!素敵な作品をありがとうございます、、 (2021年5月18日 18時) (レス) id: 0ce8940541 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まみむのめ | 作成日時:2021年3月5日 16時