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38 私を ページ40

今にも死にたくなるほど、掠れた声だった。だが、彼は耳がいい。私の決死の告白を聞くと、即座に彼の腕は私の背に回り、ぎゅうと私の体を抱きしめた。

49「お、おれも」

そう言った彼の声も掠れていた。私と同じ、決死の言葉だった。
よく見ると震えている彼の背に手を回し、柔く抱き返すと、一瞬びくりと彼の体が跳ねたが、そのまま私の手を拒むことなく、享受している。

しばらくそのまま抱きしめあっていたが、どちらからともなく体を離し、気まずい空気が私たちの間に流れた。
恋愛経験者でもない私には、ここからどうすれば良いのかわからなかったため、ままよと強引に彼の持っていた袋を取り上げて、中から取り出したおまんじゅうに口をつける。

49「あっ!それ最後だったのに!」

そう言って私からそれを取り上げようと身を乗り出す彼に、ふふんと笑って袋だけを投げてやる。


『こういうのは早いもん勝ちだもん』

49「そりゃないって〜!」

私がそう言うと、勘弁してくれと言わんばかりに彼がしょげた。その様があまりにも可哀想で、可愛くて、持っていたおまんじゅうを2つに割って、彼に手渡す。

『ごめんごめん、これでチャラにして、ね?』

いつしかの彼のようにそう念を押すと、渋っていた彼の顔がふわりと明るくなり、差し出されたおまんじゅうを受け取って嬉しそうに食べ始めた。

そんな彼の幸せそうな顔を見て、ふと、思い出したくもないことを思い出す。

そうだ、彼に伝えるべきことがあった。
ごくんと喉を鳴らす。おまんじゅうが私の手元から無くなったところで、私はおそるおそるその言葉を口にした。


『ねぇ、好中球、』


49「うん?」









『私を殺して』

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まみむのめ(プロフ) - 結(むすび)さん» はじめまして!コメントありがとうございます!結構時間をかけて作ったものなので、そう言って頂けてありがたいです! (2021年6月5日 1時) (レス) id: 7de2b213c2 (このIDを非表示/違反報告)
結(むすび)(プロフ) - コメント失礼します、、!最後まで読ませていただきました。作者さんの文章の書き方も設定を細かく考えている所も、キャラとの関係性も、主人公ちゃんのイラスト等も、何もかも素晴らしかったです!素敵な作品をありがとうございます、、 (2021年5月18日 18時) (レス) id: 0ce8940541 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まみむのめ | 作成日時:2021年3月5日 16時

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