37 言いたいこと、言うべきこと ページ39
49「それ、やっぱり俺だったんじゃん」
不貞腐れたような、しかし何故か勝ち誇ったような顔をした彼は、ベンチに腰掛けた私の隣に座った。行きしなに沢山買ってきたのか、おまんじゅうの入った袋を漁って、その1つを私に手渡す。
『ほんとに昔の記憶だったから、よく覚えてなかったみたい。あーあ、はずかしい』
手渡されたまんじゅうを齧り、ため息をついた。隣でなおも嬉しそうに笑う彼の頭を叩いて、膝で頬杖をつく。
49「いったぁ!…んもー酷い」
『しりません。……ていうか君の方こそ、私だと分かったなら言ってよ』
49「えぇ、だって間違ってたら恥ずかしいじゃん…」
まぁたしかに。
聞くところによると、彼は私たちのあの日の会話を盗み聞きしていたようだが、肝心の昔話の中身は聞いていなかったようで、お互い勘違いしていたままだったらしい。これにて一件落着とまんじゅうを平らげた彼を後目に、私はまた迷っていた。
『…………わたし』
うん?と彼がこちらを向く。握っていた拳が熱い。頬も、頭も、体全体が熱くなって、今にも倒れてしまいそうだ。
震える唇を必死に動かして、言葉を紡ごうと奮闘する。
あのね、
わたし。
わたしは。あなたにいいたいことが。
ずっと。さがしてた。
逢いたかった。 あなたに伝えたかった。
わたし。
『私っ…!』
顔を上げる。私と同じように赤く染った、真剣な彼の目と視線がぶつかった。
今だ、言え。言うんだ。
『きみのこと、ずっと、ずっと、……その、ずっと…!』
好き、だったんだ。
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まみむのめ(プロフ) - 結(むすび)さん» はじめまして!コメントありがとうございます!結構時間をかけて作ったものなので、そう言って頂けてありがたいです! (2021年6月5日 1時) (レス) id: 7de2b213c2 (このIDを非表示/違反報告)
結(むすび)(プロフ) - コメント失礼します、、!最後まで読ませていただきました。作者さんの文章の書き方も設定を細かく考えている所も、キャラとの関係性も、主人公ちゃんのイラスト等も、何もかも素晴らしかったです!素敵な作品をありがとうございます、、 (2021年5月18日 18時) (レス) id: 0ce8940541 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まみむのめ | 作成日時:2021年3月5日 16時