検索窓
今日:22 hit、昨日:0 hit、合計:25,342 hit

33 伝えないと伝わらない ページ35

こんな4989番さんの顔、初めて見た。と赤血球は思った。辺縁プールに背を預けてお茶をすする彼の横顔が、いつにも増して悲しそうだと心が痛む。

そんな私を、自分がそうなっているにも関わらず気遣ってくれているのか、だから怒ってないよってと笑って私の肩を叩いてくれた。

49「…むしろ、自信満々だった自分が恥ずかしくなっちゃうところだったよ、ありがとう」

そう言って帽子のつばをつまみ、ふかく被り直す彼の声音は、とても震えている。拒絶されることを怖がっているような、そんな震え。白血球だからと散々な目に会ってきた彼らに、これ以上の重荷を背負わせるのかと、とても気の毒に思った。


赤「…………でも、」


望みをかけるようにそう呟く。赤血球は、心のどこかで何か、しこりに引っかかっているような感覚を覚えていた。
彼女が好きだったのは、本当にそのリンパ球だったのか。どうしてもその事実が認めがたかった。
これは白血球への同情ゆえではない、具体的な理由はないが、漠然とした自信である。根拠も何も無いから、その思いを口にすることは自重するに至ったが、赤血球はそれが気がかりでならなかった。

赤「もう、告白はされたんですか?」

49「ん…まだ。怖くて全然できる気がしないや。細菌相手じゃこんな弱気にならないんだけどな」

そう冗談を言って、お茶を啜った。彼が丁度お茶を飲み干したその時に、持っていたトランシーバが反応して、彼が応答する。
そろそろ行くね、頑張って。と私に軽く挨拶をして駆け出した彼の背中に、唯一の言葉を選んで声をかけた。


赤「想いは、伝えないと伝わらないと思います!」

頑張ってくださいと、彼が私に言ったように、私もまた、彼の背中を押すように叫んだ。

34 記憶と腐れ縁:2→←32 現実の壁



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (30 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
37人がお気に入り
設定タグ:はたらく細胞 , 4989番
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

この作品にコメントを書くにはログインが必要です   ログイン

まみむのめ(プロフ) - 結(むすび)さん» はじめまして!コメントありがとうございます!結構時間をかけて作ったものなので、そう言って頂けてありがたいです! (2021年6月5日 1時) (レス) id: 7de2b213c2 (このIDを非表示/違反報告)
結(むすび)(プロフ) - コメント失礼します、、!最後まで読ませていただきました。作者さんの文章の書き方も設定を細かく考えている所も、キャラとの関係性も、主人公ちゃんのイラスト等も、何もかも素晴らしかったです!素敵な作品をありがとうございます、、 (2021年5月18日 18時) (レス) id: 0ce8940541 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:まみむのめ | 作成日時:2021年3月5日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。