30 叶わない恋:裏 ページ32
勝手になんてことを聞いてくれたんだ、とあやうく声を掛けそうになっていた。
なるべく彼女に気づかれないようにと、木陰ギリギリの場所から2人の話を盗み聞きしていて、唯一聞き取れたのは、
彼女の好きな人が、リンパ球だったってことだ。
初恋の人だのなんだのと、Aちゃんが今まで見た事のない微笑みを浮かべながらそう話すものだから、二度とその話を聞きたくなくて、その場を逃げるように離れる。
49「当たって砕けるとか…砕ける前から失恋かよ〜……」
あ〜あと帽子を目深に被り、大きくため息をつく。
俺だって男の子だから、その初恋の人とやらは俺より強いのだろうか、とか、俺よりかっこいいのだろうか、とか、勝手に対抗心を燃やすことは許して欲しい。
もし仮に俺の方が優れていたとしても、きっとそういう問題ではなかったのだろう。
Aちゃんが、彼女が選んだ男なのだ。俺とは何か違う、もしかすると、本能的に惹かれあった末の感情だったのかもしれない。
49「あ〜………クソ…羨ましいっつの…」
俺が先に彼女と出会っていたら、彼女は俺を好きになってくれていたのだろうか。
そうならないとしても、彼女の隣に居続ける特権だけは獲得できたのだろうか。
悔しかった。彼女の心を掴んだそのリンパ球の男とやらが、殺してやりたいほど羨ましかった。
49「…………1146たちと合流しよ」
前向きだけが、俺の取り柄だと思ってたのになぁ。
そう傷心した体を引きずって、俺はそんなことを考えた。
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まみむのめ(プロフ) - 結(むすび)さん» はじめまして!コメントありがとうございます!結構時間をかけて作ったものなので、そう言って頂けてありがたいです! (2021年6月5日 1時) (レス) id: 7de2b213c2 (このIDを非表示/違反報告)
結(むすび)(プロフ) - コメント失礼します、、!最後まで読ませていただきました。作者さんの文章の書き方も設定を細かく考えている所も、キャラとの関係性も、主人公ちゃんのイラスト等も、何もかも素晴らしかったです!素敵な作品をありがとうございます、、 (2021年5月18日 18時) (レス) id: 0ce8940541 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まみむのめ | 作成日時:2021年3月5日 16時