29 想い続けることへの ページ31
『どう思うって…』
赤「ぶ、ぶっちゃけですよ?す、好きとか、嫌いとか」
『………、そうですね…』
Aは考えた。
あの日、あの場所で初めて出会った彼と、私が幼い頃に出会った彼。
たしかに似ているところはあれど、初恋の人を想い続けるということは、私の数あるポリシーの中の一つでもあり、それを曲げるわけにはいかなかった。
『…好きだよ、でも』
赤「…でも?」
『私は、あの頃の彼を想い続けるって決めたから、そういう意味で彼を好きになることはない……かな』
赤「………。そう、です、か」
赤血球の落ち込み方が見るからに明らかでありすぎることに、少しだけ苦笑する。きっと彼女は、私とあの好中球とがくっつくことを願っていたのだろう。いや、彼女のことだから、相手が誰であれ、きっと、私の「好き」を尊重してくれることだったろう。
彼女の期待を大きく裏切ってしまったことに、謎の罪悪感を抱く。申し訳なさそう眉を下げて、彼女の頭を撫でた。
『なんか、…ごめんね、38は悪くないのに』
赤「えっ!?い、いえいえ!そんな!私は何も思ってませんから!ええ!」
私を傷つけまいとあわてて作った作り笑顔に、また胸が締め付けられる。それを見たくなくて、慌ててる様子の赤血球を横目に、私はまた空を見た。
あの日も、こんなくすんだ空だった。綺麗な髪を靡かせて私を助けてくれた、褒めてくれた彼には、いつになったら会えるのだろう。
あの時、伝えておけばよかった。何度も後悔した。B細胞に分化したあとも、彼を探した。しかし、彼を見つけることは出来なかった。
彼はとても強かったから、細菌に襲われて死んだことは考えられなかったが、もしかしてと万が一のことも考えた。
もう二度と、会えないかもしれない。
『……好きだよ、』
あの時言えなかったその言葉を空に投げた。彼に届けばいいなと、メルヘンチックなことを考えながら、さてと私は立ち上がり、赤血球と別れて、あの場所へと向かうことにした。
37人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まみむのめ(プロフ) - 結(むすび)さん» はじめまして!コメントありがとうございます!結構時間をかけて作ったものなので、そう言って頂けてありがたいです! (2021年6月5日 1時) (レス) id: 7de2b213c2 (このIDを非表示/違反報告)
結(むすび)(プロフ) - コメント失礼します、、!最後まで読ませていただきました。作者さんの文章の書き方も設定を細かく考えている所も、キャラとの関係性も、主人公ちゃんのイラスト等も、何もかも素晴らしかったです!素敵な作品をありがとうございます、、 (2021年5月18日 18時) (レス) id: 0ce8940541 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まみむのめ | 作成日時:2021年3月5日 16時