27 初恋:4 ページ29
リンパ球はT細胞とB細胞に分化するように出来ている。
ここに居るということは、私の同期にあたるのか、それともT細菌の男の子だったのか、そこまで上手く思い出せない。
だが、彼は私より格段に強かった。
鍛え上げられた腕の筋肉や、殺陣の動きを見ていても、私では到底できない動きをなんなくこなす。
しかし、やはりまだ未成熟だからか、免疫細胞としての機能は正常に働いていなかった。肺炎球菌たちの物理的攻撃に、私を守るように立ちはだかったせいで、ビリビリと彼の着ていた服が破けていく。
「だ、だめだよ!しんじゃうよ!」
私がそう叫ぶと、彼はにっと笑って私を見、零れていた私の涙を不器用に拭き取って、大丈夫と私の頭を撫でてくれた。
そんな応戦の中、しばらくすると、マクロファージ先生や白血球達が大勢駆けつけてくれて、私たち二人は一命を取り留め、保護されることになった。
「ふー…」
男の子は疲れたのか、息を吐きながらぽてっとその場にへたりこみ、項垂れる。その様子に私が声を掛けようかと迷っていると、ぐるりと首だけをこちらに向けて、口を開いた。
「きみ、けがは?」
『えっ…な、ない、けど…』
「そっかぁ、じゃあよかった!」
男の子はそう言って嬉しそうに笑うと、一通り私の体を見回してから立ち上がった。
そして、そういえばさと前置きをして、また口を開く。
「きみ、さっき、赤血球のおんなのこ助けてたでしょ」
『助けたっていうか、まぐれだったかもしれないっていうか……』
助けたと言えるのか。
あれだけ格好をつけておいてなんだが、あれは私の実力というより、捨て身覚悟の行動であったから、一概に私の手柄だと言い切ることは難しかった。
だが、そんな私の思いとは裏腹に、彼はふーんと首を傾げて、でもと食い下がる。
「めっちゃかっこよかったよ!おれ、そんなおんなのこ、みたことなかったから!」
私とそう歳も変わらないくせに、そう言って「頑張ったね」と私の頭を、その小さな手で撫でた。
その瞬間、好きだと思った。
恋に落ちるとはこういうことをいうのかと思った。
『あ、ありが、と…』
熱の篭った顔を見られたくなくて、俯いたままそう言うと、彼は「はじめていわれた!」と嬉しそうにまた笑って、私の頭から手を離す。
「それじゃあ、おれもう行くね!またね!」
そう言って手を振ってくれた彼に、小さく手を振り返すと、また、とくんと心が脈打つ感覚がした。
私の初恋だった。
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まみむのめ(プロフ) - 結(むすび)さん» はじめまして!コメントありがとうございます!結構時間をかけて作ったものなので、そう言って頂けてありがたいです! (2021年6月5日 1時) (レス) id: 7de2b213c2 (このIDを非表示/違反報告)
結(むすび)(プロフ) - コメント失礼します、、!最後まで読ませていただきました。作者さんの文章の書き方も設定を細かく考えている所も、キャラとの関係性も、主人公ちゃんのイラスト等も、何もかも素晴らしかったです!素敵な作品をありがとうございます、、 (2021年5月18日 18時) (レス) id: 0ce8940541 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まみむのめ | 作成日時:2021年3月5日 16時