1 いい子 ページ3
赤「えぇ〜……っとぉ…………っうわぷっ」
ぽふっ。
突然、背中に人間の体温の暖かさを感じたものだから、つい振り返ってしまった。
見ると、酸素ボンベを腕いっぱいに抱えた女の赤血球が、私を見上げて慌てている。
ぶつかっただけで、何をそこまで慌てることがあるのだろうか。
そう思い、彼女の視線のままを辿ると、着ていたつなぎの裾あたりが、酸素ボンベの汚れのせいか、少しだけ黒ずんでいた。
その事に私が怒って声も出さないと考えたのか、彼女はぶつかった拍子にずり落ちた自分の帽子には目もくれず、その頭をこれでもかと言うほどに下げ、大きな声で謝罪の言葉を述べた。
赤「ご、ごめんなさい！！私がしっかり前を見ていなかったから思いっきりぶつかってしまって…」
驚いた。好中球等の白血球達は、ほかの細胞達から怖がられているものだと思っていたのに、こうもあっさり謝罪の言葉が聞けるなんて。
いや、感心している場合ではなかったか。
『ううん、気にしないで。事故なんだから。』
赤「でもっ…」
まだ何か言いたそうな赤血球の言葉を、拾い上げた帽子を手渡すことで遮り、そのまま身を翻す。
久しぶりに他の細胞と話したものだから、どうやって話せばよかったのか分からなくなっていた。
少しだけ目線を後ろへ向けると、未だあの赤血球の女の子が申し訳なさそうに私の方を見ている。
いい子なんだろうな。
もう会うことも無いが、あの子のような細胞もいるんだなと、少しだけ零れた微笑みを欠伸で誤魔化し、また下を向いた。
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まみむのめ(プロフ) - 結(むすび)さん» はじめまして！コメントありがとうございます！結構時間をかけて作ったものなので、そう言って頂けてありがたいです！ (2021年6月5日 1時) (
レス) id: 7de2b213c2 (このIDを非表示/違反報告)
結(むすび)(プロフ) - コメント失礼します、、！最後まで読ませていただきました。作者さんの文章の書き方も設定を細かく考えている所も、キャラとの関係性も、主人公ちゃんのイラスト等も、何もかも素晴らしかったです！素敵な作品をありがとうございます、、 (2021年5月18日 18時) (レス) id: 0ce8940541 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まみむのめ | 作成日時：2021年3月5日 16時
