15 その後:2 ページ17
赤「Aさ…!!」
『なんちゃって』
驚き慌てふためいて手を伸ばした38の眼前に、顬に引っ付いた抗体を引っ張り出す。
すると、38はしばらく驚いた後、その抗体をまじまじと観察していたが、結局何が何だか分からないという顔で、心配そうに私の顔を見た。
『私たちプラズマ細胞っていうのは、いわばメモリーTのような働きをするんです。1度戦った相手に対して自力で抗体を生産することはできるけど、その回数は後にも先にもその1回だけ』
赤「……え、えっと、…?」
『えーと、そう、他の白血球たちとは違って、倒せる細菌が決まってるんです。だから、作った抗体はその抗原にしか機能しないから、流れ弾とかないっていうか』
赤「な、なるほど…」
撃ったとしても自滅することは無いとは言え、突然自分の顬に拳銃を突きつけ、あろうことか発砲するさまを見せつけられて、未だに困惑の表情を浮かべるのも無理はない。
少しやりすぎたかと笑ったが、彼女なりに心配してくれたからか、笑い事じゃない、と少しだけ怒られてしまった。
そうして、しばらく他愛のない雑談に花を咲かせていると、何かを思い出したかのように38は手を叩き、「そういえば」と口火を切った。
赤「私の知り合いの白血球さんが、Aさんのこと探してしましたよ?はりせんぼんとかなんとか言ってましたけど…」
『あ』
「はりせんぼん」。その言葉を聞いて、かの好中球の青年を思い返す。
すっかり忘れていた。
あの日、『じゃあ10時間後』と言って別れたあと直ぐに、現れた細菌達を駆除すべく走り回っていたから、約束していたこと自体すっかり頭から抜け落ちてしまっていたらしい。
困ったなと腕を組み、この後のことを考える。
まさか本当に針千本飲ます気ではないだろうが、きっとかなり怒られてしまうな、と想像してなんとなく気落ちした。
『どうしたらいいかなぁ』
赤「そうですねぇ…なら私が連絡しましょうか?」
『え、いいの?』
もちろん、と自分の胸を叩いて、38は得意げに返事をする。私に任せてくださいと言わんばかりに立ち上がり、私の目の前で敬礼をしてみせた。
赤「ふふっ、走り回るのは得意なもので!」
そう言ってにこやかに笑う彼女に、「じゃあお願いしましょうかな」とだけ伝えて、私はそれから仕事に戻ることにした。
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まみむのめ(プロフ) - 結(むすび)さん» はじめまして!コメントありがとうございます!結構時間をかけて作ったものなので、そう言って頂けてありがたいです! (2021年6月5日 1時) (レス) id: 7de2b213c2 (このIDを非表示/違反報告)
結(むすび)(プロフ) - コメント失礼します、、!最後まで読ませていただきました。作者さんの文章の書き方も設定を細かく考えている所も、キャラとの関係性も、主人公ちゃんのイラスト等も、何もかも素晴らしかったです!素敵な作品をありがとうございます、、 (2021年5月18日 18時) (レス) id: 0ce8940541 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まみむのめ | 作成日時:2021年3月5日 16時