10 落し物:後 ページ12
『まぁ、そういう感じ』
49「いやーまじでたすかった！ありがとう」
私が事の経緯を一頻り話きると、4989番は嬉しそうに私の手を取って喜んだ。
これがないと仕事に支障が出るからさーなどと言いながらトランシーバを下穿きの衣嚢に収める。
なにかお礼がしたいと言った彼の言葉にぶんぶんと首を振り、いらないと応えると、彼は眉をひそめて、不貞腐れたような、不満そうな顔をした。
49「なんで？もしかして迷惑だった？」
私の様子を窺うように、言葉を選ぶ彼に小さく笑って違うと否定を口にすると、今度は「じゃあなんで」、と腕を上げて追求の声を上げた。
『昨日、慰めてくれたから、もう貸し借りはなし。』
にひひ、と人差し指を口に当てて、そう笑ってやると、彼はぶわりと頬を赤くさせて、行き場のなくなった右手で自分の頭を掻く。
褒められなれていないのか、えへへと可愛らしく子供のように照れるその様子に、絆されそうになる心を抑えて、私は立ち上がった。
『そういうことだから、もう行くね。ありがとう、本当に感謝してます』
49「え、もう行くの？まだ抗原発見の報告もないのに」
『それはそうだけど、君は私と違って大幅なパトロールもあって忙しいでしょう。この辺で切り上げないと』
私がそう言うと、彼はまた不服そうな顔をしてみせたが、何か思い立ったのか今度は両手で私の手を掴み、勢いよく立ち上がった。
49「じゃあじゃあ、後でまたここにきてよ、多分10時間もすれば俺、今日の仕事終わってると思うから！」
『いや、でも』
49「約束ね！はい！指切った！」
また勝手に。
そう言おうと口を開いたが、小指を立てて、嬉しそうに笑った彼の顔があまりにも無邪気だったから、結局、私はわかったわかった、と二つ返事に了承してしまい、その約束を取りつけることになった。
そのことにやったぁと声を上げた彼は、そのままパトロールに向かうために、近くのマンホールに手をかけて持ち上げ、そのまま地下に潜って行った。
『……ゆびきり…か』
自分の小指を見て、そう呟く。
もし私が本当にここにこなかったら、針千本飲まされてしまうのだろうか。なんて子供のようなことを考えながら、私はその場を後にした。
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まみむのめ(プロフ) - 結(むすび)さん» はじめまして！コメントありがとうございます！結構時間をかけて作ったものなので、そう言って頂けてありがたいです！ (2021年6月5日 1時) (
レス) id: 7de2b213c2 (このIDを非表示/違反報告)
結(むすび)(プロフ) - コメント失礼します、、！最後まで読ませていただきました。作者さんの文章の書き方も設定を細かく考えている所も、キャラとの関係性も、主人公ちゃんのイラスト等も、何もかも素晴らしかったです！素敵な作品をありがとうございます、、 (2021年5月18日 18時) (レス) id: 0ce8940541 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まみむのめ | 作成日時：2021年3月5日 16時
