止血の際は正しい方法で ページ44
――嫌な予感がする。胸が痛む。
どきん、どきんと、まるで心臓が喉にあるかのように鳴り響く。それでも私の足は、栄養分の配達先へと動いていく。…不安ばかりに駆られていたって、仕方がない。私もこの体のために、働かなくては。
そこからはいつもより早く体内を循環していた。栄養を届け、老廃物を受け取り、老廃物を腎臓へ届けた。そこで、ネフロンさんが「前腕部で裂傷ができたようだから気をつけて」と教えてくれた。私は礼を言って血管を進んだ。――これから行く先は上腕部で、前腕に近い。気をつけなければ。
そう思って慎重になりながらも上腕部までたどり着いた矢先、背後から大勢の赤血球たちが押し寄せてくるのが見えた。
**
大勢の赤血球が傷口の外へ流れ出してしまうのを見た。
でもそれを気にかけていられないほど、外からの侵入者も多かった。天を裂いて伸びる傷口には、もうすでに血小板たちの姿が見える。それでも、赤血球たちはフワフワと浮いてその穴の方へ飛ばされていってしまうし、そんなもの御構い無しに細菌たちは次々と侵入してきた。
「ッとにキリがねぇなあ!!」
「荒れるな4989番、まあ確かに、今回は体の主もぼうっとしてるらしいな。止血なんかしちゃいねぇ。これで、変に間接圧迫止血なんかした日には――」
「――助けてくれぇええ!!」
「…え?」
4989番と2626番は、背中を寄せ合って声がした方をきょとんと見つめる。ここ激戦区からではなさそうだが、血管の奥から異常な量の叫び声が響いてきていた。
「な、なにこの声」
「わかんねえが、まさか……」
ドドドド、と轟く足音が迫ってきた次の瞬間、血管の曲がり角から大量の、それはもう大量の赤血球たちが押し寄せてきた。
「こっ、この体の主、まさか本当に間接圧迫止血法をーーーッ!!!」
青ざめたのは4989番ら白血球だけではなかった。血管いっぱいになって押し寄せてくる赤血球たちもだ。彼らは頭上に広がる巨大な傷を見て、絶叫した。
「うわああああ!?」
「わっ、あっ、と、飛ばされるー!」
ぶわ、と赤血球たちは次々に浮き上がって、傷口へと吸い込まれていく。反射的に体が動いて、4989番も2626番も、手当たり次第に何人かの赤血球を掴まえては引き下ろして陰に潜ませた。
294人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
お魚煮干し(プロフ) - オザさん» キラーさんには殴られたくないなぁww続きも頑張ってくださいね♪(゚ー゚*) (2018年9月2日 10時) (レス) id: 7be352b008 (このIDを非表示/違反報告)
オザ(プロフ) - カノン♭さん» ありがとうございます!話の途中と最後で、あの言葉の重さが違っていることが伝えられればなぁ〜と思って書きました!最後までお読みいただきありがとうございます!! (2018年9月2日 9時) (レス) id: 5d539585d0 (このIDを非表示/違反報告)
カノン♭(プロフ) - 第一部完結お疲れ様です!話の途中と最後に題名回収。とても好きです!!!! (2018年9月2日 0時) (レス) id: ac2788321e (このIDを非表示/違反報告)
オザ(プロフ) - まじかるれいん☆さん» 終わり方気に入ってくださる方がいてよかった〜〜ぁ!楽しんで読んでいただけたようで本当に嬉しいです、続きも頑張りますのでお待ちください!最後まで読んでくださりありがとうございました!! (2018年9月1日 21時) (レス) id: 5d539585d0 (このIDを非表示/違反報告)
オザ(プロフ) - yamanaさん» ありがとうございます!!素晴らしいだなんてそんなに褒められたことなかったので今嬉しさでうぐうぐ言っています…。はい、続きも頑張ります!ここまで読んでくださりありがとうございました!! (2018年9月1日 21時) (レス) id: 5d539585d0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:オザ | 作成日時:2018年8月7日 11時