桃色のグラジオラス ページ42
「俺は、お前を幸せにしてやれる自信がないよ」
だから怖いんだ、最後は息だけで言い切って、4989さんは項垂れるように私の肩に額をつける。
好中球だから。人よりも分化の繰り返しが早いから。きっと、私以上に様々なことが首枷となって4989さんを捕らえているのだろう。――でも、だからこそ、私はちゃんと伝えてあげなくてはならない。あなたのことを大切に思っている人がいること。あなたの愛を求めている人がいることを。
私は4989さんの首に腕を回して、口を開いた。
「死ぬことだけが、あなたの人生ではありません。私を愛して、私の愛を受け入れて、私を精一杯幸せにしてくださいよ…!」
はっきりと言おうと思っていたのに、声はかすれて、まるでささやくような声になってしまう。
なぜと思ってからようやく、私も泣いていたことにそのとき気づいた。
伝えたところで、何もかも受け入れられるわけではないということは覚悟している。その気持ちをどう整理するかは4989さんの意思だ。私はただ伝えて、今はもう、待つしかできない。
「…ありがとう。こんな俺に、愛をくれて」
4989さんはそう言って、腕を緩めた。離れていく4989さんの顔を、涙でゆがんだ視界に映す。
「ありがとう。Aちゃんのお陰で愛がわかったよ」
そう言って、4989さんはもう一度、勢いよく私を抱きしめた。
「4989さん、」
「Aちゃん。Aちゃん、愛してる、ごめん、ごめんね、でも大好きなんだ…」
震える声で、4989さんは誰かに謝りながらも必死に愛を紡ぐ。
その姿に、私はいつまでも、臆病で愛おしいこの人のことを大切にしよう、そう思った。
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桃色のグラジオラスの花言葉…ひたむきな恋。
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お魚煮干し(プロフ) - オザさん» キラーさんには殴られたくないなぁww続きも頑張ってくださいね♪(゚ー゚*) (2018年9月2日 10時) (レス) id: 7be352b008 (このIDを非表示/違反報告)
オザ(プロフ) - カノン♭さん» ありがとうございます!話の途中と最後で、あの言葉の重さが違っていることが伝えられればなぁ〜と思って書きました!最後までお読みいただきありがとうございます!! (2018年9月2日 9時) (レス) id: 5d539585d0 (このIDを非表示/違反報告)
カノン♭(プロフ) - 第一部完結お疲れ様です!話の途中と最後に題名回収。とても好きです!!!! (2018年9月2日 0時) (レス) id: ac2788321e (このIDを非表示/違反報告)
オザ(プロフ) - まじかるれいん☆さん» 終わり方気に入ってくださる方がいてよかった〜〜ぁ!楽しんで読んでいただけたようで本当に嬉しいです、続きも頑張りますのでお待ちください!最後まで読んでくださりありがとうございました!! (2018年9月1日 21時) (レス) id: 5d539585d0 (このIDを非表示/違反報告)
オザ(プロフ) - yamanaさん» ありがとうございます!!素晴らしいだなんてそんなに褒められたことなかったので今嬉しさでうぐうぐ言っています…。はい、続きも頑張ります!ここまで読んでくださりありがとうございました!! (2018年9月1日 21時) (レス) id: 5d539585d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:オザ | 作成日時:2018年8月7日 11時