一人の「人」だ ページ37
「…聞いたかもしれないが、4989番は体の使い方が本当に下手で――俺の知らない範囲のことにはなるんだが、造血幹細胞さんやマクロファージさんによると、他より速いペースで分化を繰り返しているらしい。つまり、生まれてはすぐ死んで、また一から生まれてを、俺たちより多く繰り返しているんだ。
目立たないが、あいつの戦闘力は小さい頃から実はずば抜けていて…だが、あまりエネルギーを使いすぎると、倒れたりフリーズしたり寝込んだり、その後の日常的な動作がおぼつかなくなってしまう。そして何より、白血球はあまり力がありすぎると体から敵視されてしまうんだ。…ただ、最近は少しずつそれを調節できるようになってきた。いつか一度、A番の笑顔が好きだと、あいつが零していたことがある。きっとあいつは君に泣いてほしくないんだ。自分が死んだらA番という赤血球が泣いてしまうことを、4989番はちゃんとわかってる」
言い終えてからはっとして、すまない、突然長々と…と、慌て始めた1146番さんに、私は首を振る。
「いいえ、大丈夫です。そうだったんですね、…そうですよ、4989さん、私あなたが死んだら、絶対泣いてしまうのに」
「……あいつにそう思ってくれる人がいて、俺も安心した」
帽子の庇をつまんではにかむ1146番さんは、少しだけ寂しそうだった。
彼らは死をも恐れずに戦うべきである好中球だから、手放しに無事を祈られることも、それを受け入れることにも慎重になってしまうのだろう。ただ、好中球だって笑い合うし、饅頭は投げるし、お茶を飲むし、しりとりだってする、一人の人だ。…きっと誰かにとって大切な存在の。
目を細めると、「もうこんなところか、」と1146番さんが声をあげた。血管の分岐点に立ち止まって、向かい合う。
「長々と付き合ってくれてありがとう。静脈は皮膚に近くて危険だから、気をつけて」
「はい。こちらこそ、4989さんのお話が聞けてよかったです」
じゃあな、と1146番さんはもう一度笑って踵を返す。私も別の道へ進もうとしたところで、ふと踏み出しかけた足を止めた。
「――1146番さん！」
まだそんなに離れていなかった彼を呼び止める。
忘れていたわけではなかった。この言葉はいつでも伝えたいと思っていた。ただどうしても勇気が出なかった――でも、今なら、言える気がする。
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擬「人」化というのを大事にしたかった。この世界では彼らは人間なんだもの〜
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お魚煮干し(プロフ) - オザさん» キラーさんには殴られたくないなぁww続きも頑張ってくださいね♪(ﾟーﾟ*) (2018年9月2日 10時) (
レス) id: 7be352b008 (このIDを非表示/違反報告)
オザ(プロフ) - カノン♭さん» ありがとうございます！話の途中と最後で、あの言葉の重さが違っていることが伝えられればなぁ〜と思って書きました！最後までお読みいただきありがとうございます！！ (2018年9月2日 9時) (レス) id: 5d539585d0 (このIDを非表示/違反報告)
カノン♭(プロフ) - 第一部完結お疲れ様です！話の途中と最後に題名回収。とても好きです！！！！ (2018年9月2日 0時) (レス) id: ac2788321e (このIDを非表示/違反報告)
オザ(プロフ) - まじかるれいん☆さん» 終わり方気に入ってくださる方がいてよかった〜〜ぁ！楽しんで読んでいただけたようで本当に嬉しいです、続きも頑張りますのでお待ちください！最後まで読んでくださりありがとうございました！！ (2018年9月1日 21時) (レス) id: 5d539585d0 (このIDを非表示/違反報告)
オザ(プロフ) - yamanaさん» ありがとうございます！！素晴らしいだなんてそんなに褒められたことなかったので今嬉しさでうぐうぐ言っています…。はい、続きも頑張ります！ここまで読んでくださりありがとうございました！！ (2018年9月1日 21時) (レス) id: 5d539585d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：オザ | 作成日時：2018年8月7日 11時
