飴玉 ページ4
「だから大丈夫です。…白血球さんは、仲間思いなんですね」
「…うん」
「どうしたんですか?」
「いや。1146番は罪な野郎だと思っただけさ。俺たちの存在を肯定してくれて、はっきりとしてて、すごくいい子なのに」
「私が一言もお礼を言えなかっただけですから」
「それだってただの運命のイタズラじゃん。アイツにお礼を言う機会なんて、ちょっとタイミングが違えばいっぱいあったかもしれないし」
「…運命、ですか」
なんだか面白いことを言う人だな、と私は微笑んだ。それから、他人のために一人憤ってくれている優しい白血球に向かって言う。
「それじゃあ、ここで白血球さんと二人でお話できているのも、運命なのかもしれませんね。…なんて、迷惑をかけた分際で」
「あ、俺もそう思う!」
「え」
突然目を輝かせた白血球に、私はきょとんとする。
そんな私の頭をそっと掴んで、彼はぐいっと身を乗り出した。びっくりして固まっていると、
「よし、A番!もう覚えたから、これからは他人じゃなくて知り合いだね」
「あっ、ええと、」
私も慌てて彼の帽子のプレートを見る。
「4989番さん」
「四苦八苦。覚えやすいでしょ?」
「ふふ、確かに」
笑うと、彼は一度帽子を被りなおしてからすっくと立ち上がった。
「よし。それじゃあ俺そろそろ行くね。あまり休んでると怒られちゃうから」
「あっ、はい!本当にありがとうございました」
「いえいえ。じゃあ、また話そうね――A番ちゃん」
「はい、4989(シクハック)さん」
「あは、その呼び方いいねぇー」
ぴょこぴょこと、飛び跳ねながら彼は血球たちの間に姿を消す。
さて、私も、と立ち上がって荷物を抱えようとしたとき、そのダンボールの上に白い小さな包みが乗っていることに気がついた。
「?なんだろ」
取って広げてみると、それは白いハンカチに包まれたきれいな青と黄色の飴玉だった。
「あ、飴だぁ…!」
私たち赤血球は、糖分を栄養に体内を駆け巡る。飴やアイスといった甘いものが販売されている自動販売機には目がないほど、私たちは糖分が好きなのだ。
「そうだ、このハンカチって、」
よく見てみると、隅に4989と白い刺繍がしてある。
「…ふふ。ありがとうございます、4989さん」
飴玉を口に入れ、そのハンカチをそっと頰に当てて、私は微笑んだ。
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お魚煮干し(プロフ) - オザさん» キラーさんには殴られたくないなぁww続きも頑張ってくださいね♪(゚ー゚*) (2018年9月2日 10時) (レス) id: 7be352b008 (このIDを非表示/違反報告)
オザ(プロフ) - カノン♭さん» ありがとうございます!話の途中と最後で、あの言葉の重さが違っていることが伝えられればなぁ〜と思って書きました!最後までお読みいただきありがとうございます!! (2018年9月2日 9時) (レス) id: 5d539585d0 (このIDを非表示/違反報告)
カノン♭(プロフ) - 第一部完結お疲れ様です!話の途中と最後に題名回収。とても好きです!!!! (2018年9月2日 0時) (レス) id: ac2788321e (このIDを非表示/違反報告)
オザ(プロフ) - まじかるれいん☆さん» 終わり方気に入ってくださる方がいてよかった〜〜ぁ!楽しんで読んでいただけたようで本当に嬉しいです、続きも頑張りますのでお待ちください!最後まで読んでくださりありがとうございました!! (2018年9月1日 21時) (レス) id: 5d539585d0 (このIDを非表示/違反報告)
オザ(プロフ) - yamanaさん» ありがとうございます!!素晴らしいだなんてそんなに褒められたことなかったので今嬉しさでうぐうぐ言っています…。はい、続きも頑張ります!ここまで読んでくださりありがとうございました!! (2018年9月1日 21時) (レス) id: 5d539585d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:オザ | 作成日時:2018年8月7日 11時