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あなたは大切で特別な ページ28

座ったままゆっくりと端まで移動して壁に凭れ、4989さんに手を引かれて立ち上がる赤芽球を見る。
同時進行で4989さんが連絡を取っていたことにより、すぐに好中球何人かとマクロファージさんが現れ、細菌の死骸の掃除と赤芽球の保護に当たった。

**

「…あの子。かっこよかった、って言ってたよ」
「ふふ、確かに4989さんの駆けつけ方はかっこよかったですね」
「あんがと。でもあの赤芽球はAちゃんのことを言ってたみたいだぜ」
「わ、私ですか。……嬉しい、んだけど、あまり自己犠牲を正当化するようにはなってほしくないなぁ…」
「ほうちゃんとわかっているんだな?」
「?」

ふん、と怒った振りをして目の前で仁王立ちになる4989さんを見上げて、私は首をかしげる。

「無茶をするなって言ってんの」
「結構合理的な選択ではありませんでした?」
「お前っ…人の命を合理的かどうかではかるなよ?赤血球に大事なことはとにかく逃げることじゃなかったのか」
「…優先順位を考えてしまったんです。年寄りは幼い子の方を優先するべきかなぁって…」
「もう人生満足したみたいな口ぶりはやめてくれよ。Aちゃんにはまだ俺のお嫁さんになってもらうんだから」
「…そうでしたね。そう考えると、なんだか惜しい気もします」

力なく笑うと4989さんは勢いよく膝をついて、なんだか微妙な顔をしながら両手で私の頰をこねくり回した。

「そういうこと言われると変な気分になる」
「本音ですよ。…ね、抱きしめてくれないんですか?」

ちょっと期待したんですよ、と腕を広げれば、4989さんは思いのほかそっと腕を回して、ほとんど力を入れずに抱きしめてくれた。

「…なんか抱きしめにくかった」
「ふふっ」
「いつもと格好が違うから」
「確かにそうですね。お恥ずかしい」
「似合ってるよ。…ねえ、身体痛くない?」
「4989さんに抱きしめてもらったので和らいだ気分になりました。4989ヒーリング」
「気分かぁ…」

医務室行かなきゃな、と言いながら、4989さんはその場から動かない。

「…4989さん」
「怖かったよ?本当に焦ってたんだから。Aちゃんは大切な人なんだ」
「ごめんなさい。でも一番に駆けつけてくださったのが4989さんで、安心したし嬉しかった。4989さんは特別な人なんです」

まだこれが何の気持ちなのかはわからないけれど。
心を温めるこれは悪い気分ではないから、今は二人でゆっくりとそれを噛み締めておこう、そう思った。

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お魚煮干し(プロフ) - オザさん» キラーさんには殴られたくないなぁww続きも頑張ってくださいね♪(゚ー゚*) (2018年9月2日 10時) (レス) id: 7be352b008 (このIDを非表示/違反報告)
オザ(プロフ) - カノン♭さん» ありがとうございます!話の途中と最後で、あの言葉の重さが違っていることが伝えられればなぁ〜と思って書きました!最後までお読みいただきありがとうございます!! (2018年9月2日 9時) (レス) id: 5d539585d0 (このIDを非表示/違反報告)
カノン♭(プロフ) - 第一部完結お疲れ様です!話の途中と最後に題名回収。とても好きです!!!! (2018年9月2日 0時) (レス) id: ac2788321e (このIDを非表示/違反報告)
オザ(プロフ) - まじかるれいん☆さん» 終わり方気に入ってくださる方がいてよかった〜〜ぁ!楽しんで読んでいただけたようで本当に嬉しいです、続きも頑張りますのでお待ちください!最後まで読んでくださりありがとうございました!! (2018年9月1日 21時) (レス) id: 5d539585d0 (このIDを非表示/違反報告)
オザ(プロフ) - yamanaさん» ありがとうございます!!素晴らしいだなんてそんなに褒められたことなかったので今嬉しさでうぐうぐ言っています…。はい、続きも頑張ります!ここまで読んでくださりありがとうございました!! (2018年9月1日 21時) (レス) id: 5d539585d0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:オザ | 作成日時:2018年8月7日 11時

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