働かざる者食うべからず ページ11
酸素の配達中、高架下をてくてくと歩く4989さんを見かけて私は声をかけた。
「4989さーん」
「ん!?」
「上です上」
「あっ!Aちゃんだ!わーい」
わーいって何だわーいって。あざといなぁ本当に。
擦り傷の一件から母性愛が目覚めつつある私に、彼は仁王立ちになり、こちらを見上げて言う。
「あそうだ!Aちゃん俺の友達になってくれる?」
「今度は友達ですか。いいですよー」
「やったぜ!!」
「もうすっかり元気なんですね」
よっしゃーとガッツポーズをする彼に「それじゃあまた、」と手を振って私は道を急ぐ。後で、このやり取りを見ていた知り合いの赤血球から「お前あんなニコニコ顔できんのな」とびっくりした顔で言われた。
【君の泣き顔に嫉妬する】
「…最近平和だな」
「本当に」
「最近出ないもんな…細菌」
「おい面白くねえぞ…」
白血球好中球課のズッ友四人は、辺縁プールのベンチに並んで座っていた。
白血球がそうして並んでただ腰掛けているというだけでも珍しいのに、さらにその四人が物の見事にダレているので、循環プールを通過する赤血球たちはその異様さにコソコソと耳打ちをしていた。
「腹…減ったな…」
「頑張れ4989番、多分もうすぐ頼んでいた栄養が届けられるから」
そう友を励ます1146番も先程から鳴り止まない腹の音にすっかり項垂れている。
最近、体内は実に平和で、滅多に細菌が出没しないために白血球の食事も自動的に減っていたのだ。細菌は非常に美味しくないが、エネルギーだけはふんだんに含まれているため白血球たちにとって欠かせない食料にもなる。出動がほとんどないとはいえ、何日もちゃんとした物を口にしないでいるのは流石に限界を感じるものがあった。
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お魚煮干し(プロフ) - オザさん» キラーさんには殴られたくないなぁww続きも頑張ってくださいね♪(゚ー゚*) (2018年9月2日 10時) (レス) id: 7be352b008 (このIDを非表示/違反報告)
オザ(プロフ) - カノン♭さん» ありがとうございます!話の途中と最後で、あの言葉の重さが違っていることが伝えられればなぁ〜と思って書きました!最後までお読みいただきありがとうございます!! (2018年9月2日 9時) (レス) id: 5d539585d0 (このIDを非表示/違反報告)
カノン♭(プロフ) - 第一部完結お疲れ様です!話の途中と最後に題名回収。とても好きです!!!! (2018年9月2日 0時) (レス) id: ac2788321e (このIDを非表示/違反報告)
オザ(プロフ) - まじかるれいん☆さん» 終わり方気に入ってくださる方がいてよかった〜〜ぁ!楽しんで読んでいただけたようで本当に嬉しいです、続きも頑張りますのでお待ちください!最後まで読んでくださりありがとうございました!! (2018年9月1日 21時) (レス) id: 5d539585d0 (このIDを非表示/違反報告)
オザ(プロフ) - yamanaさん» ありがとうございます!!素晴らしいだなんてそんなに褒められたことなかったので今嬉しさでうぐうぐ言っています…。はい、続きも頑張ります!ここまで読んでくださりありがとうございました!! (2018年9月1日 21時) (レス) id: 5d539585d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:オザ | 作成日時:2018年8月7日 11時