検索窓
今日:61 hit、昨日:14 hit、合計:215,997 hit

勘違い ページ2

「あ、あ……! ごめん泣くほど痛かった!? うおお、ごめんよぉ」
「4989番お前〜」

ああもう、人前で泣いて、関係ない人に迷惑かけて。ごめんなさい、違うんです、言おうとしても声にならず、それはただ嗚咽となってのみ内から出ていく。
焦ったように顔を覗き込んでくる顔を歪んだ視界の向こうに映して、ああ白血球だ、でもあの白血球さんじゃないんだな、と今更なことを思う。あの人ではない。あなたじゃない。

「その、白血球が赤血球を泣かせてる構図はあまりよろしくないから、ちょっと端に移動しよう――あ、あのベンチにでも」

ごめんなさい。違うのに。何も知らないあなたの優しさを無駄遣いして。そう思いながら、私は彼に支えられるようにして道端のベンチへ向かった。


「痛かったよね。ごめんね」

喉をひくつかせたまま、かろうじて首を振る。

「どこも痛くないの?無理してない?」

大丈夫です、と頷く。
ベンチに座る私と、その前に膝をつく見知らぬ白血球。口もとに片手をあて、空いた手を膝に置いていると、彼はその手に遠慮がちに触れ、指先で撫で、そっと包んだ。

「ごめんね、びっくりしたよね。ゆっくりでいいから、今はとりあえず落ち着いて…」

本当に心配そうにしてくれるこの白血球に、私は少しずつ不思議になってくる。
ぶつかっただけで過呼吸気味に泣いてしまうだなんて本気で思っているのだろうか?それとも、白血球が赤血球に恐れられているということも加味してのことなのか?

わからないけれど、この人が途轍もなくお人好しだということだけはわかった。
一緒にいたもう一人の白血球はパトロールを続けるからと道を進んで行ってしまったし、彼が飲んでいたお茶は放置されたまますっかり冷めてしまっている。

温かい人→←恋を失った



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (211 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
294人がお気に入り
設定タグ:はたらく細胞 , 4989番
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

お魚煮干し(プロフ) - オザさん» キラーさんには殴られたくないなぁww続きも頑張ってくださいね♪(゚ー゚*) (2018年9月2日 10時) (レス) id: 7be352b008 (このIDを非表示/違反報告)
オザ(プロフ) - カノン♭さん» ありがとうございます!話の途中と最後で、あの言葉の重さが違っていることが伝えられればなぁ〜と思って書きました!最後までお読みいただきありがとうございます!! (2018年9月2日 9時) (レス) id: 5d539585d0 (このIDを非表示/違反報告)
カノン♭(プロフ) - 第一部完結お疲れ様です!話の途中と最後に題名回収。とても好きです!!!! (2018年9月2日 0時) (レス) id: ac2788321e (このIDを非表示/違反報告)
オザ(プロフ) - まじかるれいん☆さん» 終わり方気に入ってくださる方がいてよかった〜〜ぁ!楽しんで読んでいただけたようで本当に嬉しいです、続きも頑張りますのでお待ちください!最後まで読んでくださりありがとうございました!! (2018年9月1日 21時) (レス) id: 5d539585d0 (このIDを非表示/違反報告)
オザ(プロフ) - yamanaさん» ありがとうございます!!素晴らしいだなんてそんなに褒められたことなかったので今嬉しさでうぐうぐ言っています…。はい、続きも頑張ります!ここまで読んでくださりありがとうございました!! (2018年9月1日 21時) (レス) id: 5d539585d0 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:オザ | 作成日時:2018年8月7日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。