【文スト】きみも悪い人でよかった 第二章【中島敦】

六十一 ページ35

夜の海辺で私と敦君は、はしゃいでいた


『敦君、この花火色が変わるよ！』


月光に照らされてキラキラ光る砂の上を、私は何色にも変化する花火を持って走り回る


「Aちゃん、此方は甘い匂いがする！」


敦君も同様に、砂の上を走り回っていた


そんなはしゃぎ回る私達の姿は

未だ幼い、少年と少女の様であった


しかし、火花を散らし続けていたそれは、何時かは終わりを告げる

私は、水の入ったバケツにそれを投げた


次は何の花火にしようか

花火が入った袋の中を確認する

しかし、残っていたのはたった二本の線香花火


それを見て、私はあることを提案した


『ねぇ、敦君！どっちが長く続くか勝負しよう！』


「そうだね、やってみよう！」


私達は近くにあった石垣の上に座った


そして、火の玉が落ちないように、慎重に火を付けた


徹夜明けの海沿いで

その花火はまるで牡丹のように

大きい花を咲かせた


それは午前四時の事だった

六十二→←六十

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