【文スト】きみも悪い人でよかった 第二章【中島敦】

五十八 ページ32

真夜中、皆の寝息が聞こえる部屋の中


「むぅ…お兄様…」


『わっ…ごめんナオミちゃん』


実は私、少しの間旅館から脱け出して

遊びに行こうと思っている

だから誰にも気付かれずに行かなければ


皆の足や腕を踏みつけぬよう慎重に通る


『はぁ…』


そして扉の前

やっとの思いでここまで辿り着いた


私は扉を開けた…が

ゴツッと何かにぶつかった様な鈍い音がした


ゆっくり扉を開け、隙間から向こうを覗いて見ると…


『敦君！』


そこには、うずくまった敦君がいた



………これ、多分私がぶつけてしまったやつだ

私は急いで敦君に駆け寄った


『敦君大丈夫！？本当にごめんなさい！』


「うぅ、大丈夫…。それよりAちゃん、今からどっか行くの？」


『え、あぁ、えっと…温泉入ろうと思って！』


「今の時間は温泉入れないって、旅館の人が云ってなかったっけ？」


『えっ、あ！そ、そうだよね！』


どどどどどうしようっ！

敦君めっちゃ不信そうにしてる


もう嘘がつけない……白状しなければ


『なんか、ちょっと寝れなくて…どっか行こうかなって思ってたんだ』


「そうなんだ…」


敦君はそう云うと、何か考え始めた


『…やっぱり、脱け出すのって駄目だよね』


「まぁ、確かに駄目かもしれないけど………じ、実は、僕もどっか散歩しにいこうかな…なんて思ってたんだ」


『あ、敦君も！？』


思わず大声を出してしまった私の口を敦君は慌てて塞いだ


『ご、ごめん』


「大丈夫。ところでAちゃん、脱け出すって云っても、何処か行く所はあるの？」


『それが…何処も無いんだ』


今日で二泊三日が終ってしまうと思うと、なんだか寂しくて

どうせならもう少しだけ

蒼くて美しい海が近くで見えるこの街を、もう一度よく眺めていたいと思ったんだ


「そうなんだ。それだったら良い案があるよ！」


そう云うと敦君は、幾度となく繋いだ私の手を、また、今回もぎゅっと繋いだ

五十九→←五十七

• 金　運: ★☆☆☆☆
• 恋愛運: ★★★☆☆
• 健康運: ★★★★★
• 全体運: ★★★☆☆

ラッキーカラー

あずきいろ

ラッキーナンバー

8

おみくじ

おみくじ結果は「末凶」でした！

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す