【文スト】きみも悪い人でよかった 第二章【中島敦】

四十五 ページ19

目の前にあった敦君の顔が離れる


『…へ？』


何が起こったか判らない私は、自身の額に触れてみる


…なんともなってない


敦君を見る

私と目が合うと、敦君は恥ずかしそうに笑った





…！？


も、もしかして……



顔がどんどん熱くなって行くのを感じて、頬に触れる


こ、これ絶対私の顔真っ赤だっ！


恥ずかしさのあまり、口を開けたり閉めたりしてしまう


私は思わず立ち上がって、こんな事を口にしてしまった


『あ、敦君の馬鹿っ！！』


私はそう吐き出すと、敦君の顔も見ずに走り出した


「ま、待ってよ」


そう云って追いかけてくる敦君の声なんて、私には聞こえない


ああ！もう頭がくちゃぐちゃだ！

敦君が悪いんだ、あんな事をするなんて

もう、只でさえ君の事しか頭にないのに、あんな事をされたら君をもっと…………ああ、何でもないっ！


でも、一つだけ我が儘を云わせてほしい欲しいんだ


どうか私を………



夜の浜辺に二人分の砂を蹴る足音がする

後ろから私を追いかけてくる足音が徐々に近くなる


判っている、敦君は足が速いこと

判っていた、敦君は何時も私を捕まえてくれる事



そして、後ろから突然抱き締められる


『わっ！』


私と敦君は輝く星の上に倒れた

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