【文スト】きみも悪い人でよかった 第二章【中島敦】

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この後、私達は海の家に行って、美味しいものを沢山食べていたのだけど

賢治君が自分の村から持ってきたという西瓜で急遽西瓜割りをする事になった


「一番目に割る人は誰ですか？」


敦君が聞くと太宰さんはよくぞ聞いてくれたという顔でニコニコしながら云った


「それはもう決まっているのだよ！それは……国木田くん！！さぁ、目隠しを付け給え」


あ、この太宰さんの顔何か企んでる


「俺か？」

国木田さんはそんなことも知らずに、自分の名前があげられた事が嬉しかったのか

普通に目隠しを付ける


「そ、それでは国木田さん、目隠しを付けたら棒を額につけて、十周回って下さい」


敦君がそう云うと、国木田さんはその通りに、黙々と回り始めた


「こ、これで良いか？」


十周回り終えた国木田さんはふらふらしていた


｢よし、じゃあ私が指示を出そう!国木田君、そこを少し右だ。否、西瓜に足が生えたよ｣


この時誰もが、この人何を云っているんだ?という目で太宰さんを見ていた


｢あ、西瓜が走り出した!国木田君、西瓜が逃げてしまうよ｣


｢だ、太宰、西瓜は何処だ。早く指示を出せ!｣


｢国木田君、そこから真っすぐ五十米位先だ。早く行かなければ何処か行ってしまうよ｣


｢わ、判った｣


そう云うと国木田さんは走り出した

それも物凄い速さで


当然、西瓜に足は生えないし、走り出すわけもない

私達はただ、もうすでに遠くに行ってしまった国木田さんの後ろ姿を見つめるだけだった

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