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「.........ふぁあ」



何か懐かしい夢を見た気がする。寝室の外から聞こえるのは、Aが忙しなく走り回っている音。

そして、寝室の扉が開いた。




「侑くん、私今日鍵当番やからもう出るけど、ゆっくり寝とっていいからね」

「ん、わかった」



寝ていた俺に気をつかってか、Aの優しい声に返事をする。ベッドの中の俺を覗き込んで、愛おしい笑顔を向けてくるAの頭を軽く撫でた。



「へへ、朝から侑くんに元気もらえるんめっちゃ幸せ。今日も大好きやで、いってきます」

「俺も大好き。いってらっしゃい」



幸せな日々のおかげで、愛の言葉もあいさつになる。軽く唇を合わせて、Aは寝室を出た。数秒後に家の扉が閉まる音がした。

高2で出会い、付き合って、今はもうお互い24歳。俺はプロでバレーしとって、Aも立派な社会人。


大きい喧嘩もすることなく、大学卒業と同時に同棲を始めた。

でも遠征があるから、たまに長期間家を空けてまうこともある。



「......明日からの遠征また寂しいわあ」



独り言が寝室に響く。Aの香りがする布団の中にうずくまって目を閉じた。しかし、なかなか眠れず、布団から出た。

ダイニングテーブルの上には、お皿が並べてあった。その横には小さな紙。



『侑くん、おはよう
朝ごはんよかったら食べてね
スープは冷めとるかもやからまたあっためてね

お昼にお弁当作ったから、
トレーニング行くとき持ってってね

帰りに買い物して帰るから、
夜ごはん食べたいものあったらラインして!

今日も一日がんばるぞー!』



Aらしい丸っこい字で、書かれた小さな手紙。愛おしいその手紙を2回折って、大事にしまった。

Aは手紙を書くことが好きで、こうゆう小さい連絡もラインやないし、クリスマスやバレンタインの行事でもいつも小さな手紙をもらっていた。

もちろん、記念日にはいつもより少し長めの手紙。どんなときもAからの手紙は嬉しくて、胸がいっぱいになる。




「いただきます」



ふわふわのフレンチトーストに頬が緩む。最初は料理に苦戦していたAやのに、しっかり胃袋つかまれてもーた。


朝食後、食器を片付け、トレーニングに行く準備をする。あ、Aに夜ごはんのラインせな。

少し考え込んで、帰り迎えに行くから、一緒に考えよとラインした。



明日から遠征でしばらく離れるから、少しでもAとの時間を増やせるように。





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作者名:いおり | 作成日時:2021年10月15日 8時

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