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「うお、この魚侑くんそっくりやん」
「いや、どこがやねん」
「なんか笑い方が変」
「魚は笑わんやろ！」
Aちゃんが楽しそうに笑う。楽しそうにしてくれんの、嬉しすぎて顔がニヤける。
2人で入ったのは水族館。魚見んのなんて何がおもろいねんって思っとったけど、好きな子がしてることは全部愛おしい。
目をキラキラさせながら、大きな水槽の中を見つめるAちゃんとの距離を意図的に縮めてみる。
「Aちゃん魚好きなん？」
「んー魚好きってゆーか、水族館って場所が好き！」
近距離の笑顔と「好き」って言葉に照れてまう。俺に言うてくれとる訳じゃないけど。
「なら一緒に来れて良かったわ。嬉しそうなAちゃんかわええし、一緒におって楽しい」
「へ？！」
我ながら攻めた発言に、Aちゃんの顔は真っ赤。大きな目をパチパチさせて、俺を見つめる。
「あかんて、侑くん、ときめいちゃうやん...」
「ときめいてええで」
「う、あ、暑いな？海やからかな？」
「室内やけどな」
焦ったようにAちゃんは、俺から目を逸らしながら、自分の熱を冷まそうと手で顔をパタパタ仰ぐ。
今まではAちゃんの無意識のバカかわええ行動に俺がドキドキさせられとったけど、今は大逆転。俺がAちゃんをドキドキさせとる。
「あ！な、侑くん、クラゲ、な？クラゲいこ！」
「んーはいはい」
「私クラゲめっちゃ好きやねん！ふわふわかわいいよなあ」
「俺はAちゃん推しやけどな〜」
「は？！ほんま今日どしたん？おかしなっとー？」
またまた顔を真っ赤にして、俺を見上げる。
あーかわええ、ぎゅってしたい。けど、まだあかん。
「クラゲ行かんの？置いてくで？」
「.........侑くんめ」
真っ赤な顔のまま俺の隣を歩くAちゃん。
今日は俺のペースで進めたるからな。
「わあ！やっぱりクラゲめっちゃ綺麗やわあ」
クラゲゾーンに着くと、一気にAちゃんをクラゲに持ってかれる。
それが悔しくて、さっきよりもさらに距離を詰めて、Aちゃんの隣に立った。
2人でクラゲを眺めている時間は、ゆっくりと過ぎていく。
どこか安心する雰囲気の中、穏やかな沈黙を破ったのはAちゃんだった。
「.........あ、の、あのさ、あ、つむくん」
「どしたん？」
「迷惑かもしれんのやけど、」
「ん？」
Aちゃんは俺の方に向き直る。
「わ、私、侑くん、好きです」
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作者名：いおり | 作成日時：2021年10月15日 8時
