【コラボ】傷が語る過去【歌い手】 (ページ47)

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忘れていた～女主視点～ページ47

『――ったぁ～』
後頭部を抑えて体を起こす

花瓶で殴られるとは思わなかったな…
さすがに辞書とは違って物凄く痛い

いや、辞書も痛いのだが

『…姫歌ちゃんを追わないと！』

確か右側に行ったような…足音的に、たぶん

扉を開けて走り出す
できるだけ足音を立てずに
体力には少々自身があったりするのだ

『えっと…どっち…？』
でも私の方向感覚と勘はあまりあてにならない

迷った…
そうだよね、知らないとこでむやみやに走ったら迷うよね
曲がり角で壁に寄りかかってため息をついた

―――すると、

「おや…見ない顔ですね」
『っ！？』
警戒していた方と反対側から声が聞こえた

そこには40代後半くらいの男性がいた

「貴方は…どこかで見たことがあるんですが…」
どうしよ…これやばいよ
しかも顔を知られてる…？

逃げようとするも簡単に捕まってしまった
逃げることもできないなんて…

「あぁ、思い出しました…確か柚子さん、でしたね」
『――え、』

今の呼び方…
誰にでも呼ばれはするがこの人のは――――――どこかで…？
なにか、なにか引っかかる

「やはり覚えてないんですね…私は姫歌の父です」
『はぁ…』
「記憶が、ないんですよね？そうですか…

―――あれだけ私達を不幸にしておいて」

『っ！！』
最後…声がすごく低く、冷たくなった

嫌だ

なんだろうこの感じ

前にもあったような

嫌だ、嫌だ嫌だ

「貴方は姫歌と仲がよかった…親友と言い合うほど。
でも貴方は娘を裏切った」

『っやめてくださぃ…』

「いったい何時からの事を覚えてないんですか？
娘と仲がよかったことは知らないようですから…テロあたりですかね？」

“テロ”その言葉に反応して肩が揺れた

「そうですか、では教えて差し上げましょう。貴方が娘になにをしたのか」
『…やめてください』

「貴方は娘に…」
『やめてっ…』

「――――――刃物を向けたんですよ…？」

『やっ――――』

脳裏で渦巻くなにか

痛い、嫌だ、見たくない、知りたくない

――――
―――

(空君なんて…！)

(は、)

(ひめちゃん？なにやって―――)

やめて、やめてよ…どうして

(やめてよひめちゃん…やめないと、私が――――)

『はっ、はぁ…はぁ…っ』
「思い出しましたか？」
汗か涙かわからないもので手が濡れる

なに今の…？

これが記憶？
私が忘れていた…？

はっきりはわからない

けれど確かに見た

自分の手に握られた――――――